高齢者は一様ではない2011年01月07日

我が国の財政を圧迫している最大の要因が、支出の3-4割近くを占める社会保障費、すなわち年金・医療・介護の費用。

年金・介護は定義により高齢者向けの出費であるし、医療費も70歳以上の出費が4割を占める。すなわち、ほとんどが高齢者のための費用なのである。

この社会保障費用は今後高齢化が進展するに連れてどんどん増えていく。したがって、中長期的な財政運営を考えるにあたっては、一時点で収支を合わせるための増税だけではなく、恒常的に社会保障費用をコントロールしていくことは避けて通れないのである。

そのために必要な発想は、
① 自立できる人は自分の足で立ち、そうでない本当に困っている人に手を差し出すのが社会保障の役割
② 高齢者と言っても多様であり、ひとくくりでとらえることはもはやできない
という二つではないか。

①について、そもそも現在の年金制度は平均寿命が60歳くらいにできたものであり(と、聞いている)、「うっかり長生きしてしまった」人に保障を提供する「保険」だったのである。現在に直せば、受給開始年齢が80歳とか85歳のものか。うっかり長生きしてしまった人以外、すなわち予想できる長生きについては、原則として自助で準備すべきである。

そして、現役世代が引退世代を支える「賦課方式」で運営されている以上、「過去にいくら年金保険料を納めた」というのは「いくらもらえるか」という点とは無関係であり、現時点で現役世代がどれだけ支えられるかという観点から考えるべきである。個人の家庭でも、将来子供に支えて欲しい人はたくさん子供を産んで「備える」のだろうが、国全体として子供をたくさん産んでこなかったので、お小遣いが少なくなるのはやむを得ない(これはあくまで理論上の話だが)。

②については、65歳と80歳では全然身体も生活も違う(62歳と仕事をしているので自信を持って言える)し、高齢者の中でも実は経済的格差は非常に大きく、65歳以上の世帯のうち28%が預貯金3千万円以上を保有しているという。

これからの財政運営を考えるにあたっては、社会保障でこれらの視点、すなわち「本当に社会保障が必要な人に絞って提供していく」「現役世代でどれだけ支えられるかから考える」「高齢者と言っても負担能力がある人とない人がいるので、ひとくくりではなく丁寧に見ていく必要がある」と言ったことではないか。

よい3連休をお過ごしください!