駄々こね王国、ニッポン。2011年04月12日

40兆円しか収入がないのに90兆円も使い続けたら辻褄が合わないことは小学生でも分かることだが、収入を増やそうと増税を提案しても、「財務省の陰謀」「先に削るべき無駄があるはずだ」と反対される。

収入が増えないなら支出を減らすしかないのだが、もっとも大きな支出である年金を減らすために受給開始年齢を引き上げようとしても、高齢者が反対する。

次に大きな費用広告である医療費について、保険料を上げるか、自己負担を増やそうと思っても、「弱いものいじめ」「姥捨て山」とマスコミに反対されるのでそれもできない。

ならば医療コストを合理化しようと、レセプトの電子化や、医療データの開示を迫ってみても、(無駄な投薬や検査を指摘されかねない)医師会が猛反対するからできない。遠隔医療を実現しようと思っても、同じく。

支出を減らせないので、やっぱり増税できないかと考え「まずは公務員が身を削れ」という主張を実現しようと思っても、労働組合が反対するから人員削減も給与カットもできない。

それなら上げ潮路線で行くしかないので、企業に頑張って稼いでもらおうと、できるだけ競争しやすいように減税したり雇用コストを下げようと思っても、「大企業優遇」と労働組合に反対されるので実行できない。結果、皆がジリジリ沈んでいく。「企業の競争力強化」がまっとうな政策として取れないのは、日本くらいではないか。

ならば莫大な金融資産を活用することで投資で稼いでいこう、と思って資本市場で投資ファンドが活躍し出したら「汗をかかないでお金を稼ぐのはけしからん」という風に検察も裁判官が反対するので、投資家が日本の資本市場から去っていった。

新しい産業を創ろうとちょっと尖った生意気な起業家が出てきたものの、本当に社会を変革しうる核心部分に迫ろうとしたら、メディアに猛反発を受け、検察の助けも借りて刑事犯罪人に仕立て上げられてしまう。

農業や医療・介護といった分野で規制の見直しをすることで新産業を育成しようとしても、業界が反対するので、実行できない。しょうがないので、政府の成長戦略と称して「グリーン・イノベーション」やら「ライフ・イノベーション」やら、誰も反対し得ない空虚な言葉を掲げ、お茶を濁す。

少子化で人口が減って行くのが困るので、移民を促進しようと思ってみても、外国人の看護師試験合格率は4%と、司法試験並にハードルを上げて、導入を事実上拒む。

結局、国民全員がいやいや駄々をこね続けるので、今は文句を言えない子供たちに負担を押し付けることになる。

この国を変えるのは、容易ではない。

コメント

_ inot ― 2011年04月12日 09:03

そのとおりだと感じます。このような状況を打破すべく、ビジョンを持ったリーダーが不可欠だと思いますが、「一票の格差」といった選挙の問題等もあり、そのようなリーダーが選出されにくくなっているようにも感じます。

_ take ― 2011年04月12日 11:09

全くですね。ただもう現実的には増税するより他はないと感じています。
それも消費税だけではなくて、政府には既存の税制度も見直し抜本的な解決を図ってもたいたいです。

_ 嶋田 ― 2011年04月12日 12:14

黒船、敗戦・・・・これまでの歴史が語るように、行き着くところまでいかなければ変われないでしょうね。
それとも外圧頼みとか、いずれにせよ自己変革はできっこない前提で考えたほうがよさそうです。

_ (未記入) ― 2011年04月12日 12:21

国債踏み倒せばどうですか?

_ ボストン ― 2011年04月12日 14:05

国民の過度な「政府に手厚く面倒見てもらって当然」意識が政策を滞らせてしまう。みんなが国益のために未来を見据えて政策に協力しないと日本は本当に沈んでいってしまうのかも。

_ おさ ― 2011年04月12日 14:33

なぜ国債発行額が減っていかないのだろうと思っていたが岩瀬さんの記事を読んで納得しました。
国債という風船を一度膨らませてしまうと、もうどうにもならないんですね。
震災復興でさえも、新たな権益が生み出され何10年にもわたって既得権益化するのではと穿った見方をしてしまいます。

_ 57 ― 2011年04月12日 15:36

民主主義は良くも悪くも多数決。

この国の最大多数である老人達は、変えることより現状維持を選び、コストの負担は拒絶し、顔の見えない未来の人々にツケをまわす。
おかしいと感じ、良くないと知っているが、彼らはその選択を変えることは無い。

別の選択をする、つまりサービス低下か負担増を受け入れるメリットが、彼らには無いから。
とはいえ、永遠にこれが続くわけじゃありません。どこかで、強制的に変えざるを無くなるでしょう。
そのときに、今の老人がこの世に存在しているかは不明ですが。

ダイエットを想像すればわかりやすい。
今痩せないと体に良くない。でも、ダイエットはつらい。
目の前の美味しい物を食べてしまう。
ある日、医者にこのままじゃ死にますと言われ、やっと健康管理を始める・・・・・・

_ satoshi ― 2011年04月12日 16:57

この国は悪化しているという現状認識が出発点かと。いたるところに開けられないパンドラの箱。地震で思わぬ「電力」という前提条件が変化しても、まだまだ"出発点"は遠い。でも諦める理由もない。

_ K ― 2011年04月13日 07:03

利権の国。一度手にしたら放しません。
政治家ばかりが悪いわけではない。
さらに大きな利権を生まないと変えるのは難しい?

_ 38219 ― 2011年04月13日 07:29

うまくまとめてくださってありがとうございます。

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