生命保険入門(新版) - part 12010年01月06日

相方の出口の「生命保険入門」(岩波書店)が5年ぶりに大改訂され、新版が出た。献本御礼。社内だから違うか。
http://www.amazon.co.jp/dp/4000236873

この本の旧版は擦り切れるくらい読み返しているのだが、生保業界にかかわらず、わが国の金融システムがどのように発展してきて、これからどのように進んでいくのか、生命保険という一つの(大きな)金融業を題材に理解できる良書だと考えている。

今回は半分以上を書き変えているようで(いつも週末、夜遅くまで大変そうだった)、改めて読み応えがある。

取り急ぎ、読んでいて、気に入った箇所を紹介したい。

時価会計については、金融危機後、停止すべきとの声もありますが、出口は力強い意見を持っている:

「経済価値会計の問題は、一部で囁かれているような投資銀行のM&Aの道具や、ましてやアングロサクソンの陰謀等では決してなく、ALMに資する等、経営者の正しい判断を導くための1つの道具立てとしてとらえるべきものであろう。公正な経済価値で資産と負債を評価することは企業活動の実態をより正しくとらえようとする人間の営為に他ならない」(p.113)

低金利政策のインプリケーションについて、有利な貯蓄商品を創る難しさ:

「このような(注:低金利政策が継続される)見通しの中で、そもそも生保であれ、銀行、証券であれ、有利な長期金融商品が設計できるだろうか?答えは悲観的なものとならざるを得ない。低金利政策は文字通り期間の利益を限りなくゼロに近いものとして、生保や年金に代表される長期金融商品を市場から一掃してしまうものである」(p.157)

保険業界、規制緩和から15年の検証。「抵抗勢力」となった大手生保のありようを、痛烈に批判している:

「この10年の間に、攻める銀行業界と守る生命保険業界の間で熾烈な戦いが行われ、その結果として、前述したような新しい販売規制が設けられた。この問題には、日本の社会が抱えている重大な問題点が凝縮されているように思われる。すなわち、①規制緩和に時間がかかり過ぎ、時間との競争に敗れる、②失われたのは、実は10年という時間だけではない。既得権を守る側が、知恵を振り絞って規制緩和の効果を減殺させるような新たな障壁を(失われた時間の間に)創りあげる。たとえて言えば、10年攻城してやっと城門が開いたと思ったら、その10年の間に、内側に新たな城壁が完成していたようなものである。一般論ではあるが、あらゆる規制緩和は、思い切って短時間でやるべきではないか。一気呵成に規制緩和を行えば、守る方でも、非生産的な第2の城壁作りに経営資源を投入するのではなく、新たな商品やサービスの開発等、もっと前向きの仕事に勢力を割くはずだ」(p.169)

最後の文章とか、身内ながらカッコイイ。これくらい力強いメッセージを発信できるようになりたいです。

まだまだ紹介したい箇所があるのですが、今から名古屋に行ってきます。

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