惚れ力2010年04月19日

フィナンシャル・ジャパンさんの企画で、将棋の羽生名人と、文楽界のプリンス、桐竹勘十郎さんとお話する機会に恵まれた。
http://dmdjapan.com/?pid=20310302
http://www.performingarts.jp/J/art_interview/0806/1.html

お二人ともその道の第一人者なのだが、共通していたのは将棋や文楽を「仕事」としてではなく、「好きなこと」として捉えていること。

羽生さんは「才能とは、続ける力である」と言われていた。勘十郎さんは「自分ほど人形が好きな人はいないと思う。それが、自分の強み」と言われていた。いずれも、将棋や文楽が好きで好きでしょうがないから、誰よりも優れた業績をあげてこられたのだろう。

このように言うと、「好きなことを仕事にできればいいよなぁ。でも、そんな恵まれた人はほんの一部に過ぎないのでは」という風に思われるかも知れない。それは、違うと思う。

大切なのは、「好きなことを仕事にする」ではなく、「やっていることを好きになる」力ではないかと思う。それは、対象の中によいことや楽しめることを見つけ出せる力だったり、何事に対しても前向きに取り組む姿勢だったりする。

先日、結婚紹介ビジネスの方とお話したのだが、結婚をできるためには自分が魅力的なのと同じくらい、目の前にいる相手を好きになる力、いわば「惚れ力」が不可欠、と言われていた。これと同じことだと思う。誰だって粗を探せばいくらでも見つかるし、物足りない点はいくらでもある。でも、足りない点よりもいい点をどれだけ見つけ出し、そこを好きになれるか。その力こそが、大切なのではないか。

振り返ってみると、自分も割とこの「惚れ力」が強いように思えた。例えば、コンサル時代に「産業用手袋のマーケティング戦略」という渋いプロジェクトに携わったのだが、クライアントに様々な手袋のサンプルを送ってもらい、机の上に飾って、色々な手袋をはめながらニヤニヤしてエクセルを叩いていた。私は別にもともと「産業用手袋」が好きだったわけではないので、やっていることに没頭できる性格なのだろう。今だってもちろん、アイ・ラブ・セイホ。

また、仲間のことを好きになることもしかり。最初に会社に出資してもらった谷家さんには、「岩瀬くんの一番の長所は、人のことを心の底から好きになれること」と言われた。そう、惚れやすいんです、私。その結果、開業前には想像もできなかったくらい素敵な仲間に囲まれて、毎日を過ごしている。そして彼らが面接をし、連れてくる仲間はまた、素敵な人ばかりで、新しい仲間にも惚れてしまう。

世の中には、華やかなビジネスがあるわけではないし、楽しい仕事があるわけではない。一見楽しそうに見える仕事も、中に入ってみれば、同じように単調であり、難しかったり嫌なことだってある。

そこにあるのは、自分に与えられた仕事を楽しくできるよう、工夫できたり、感じられるかどうかだけである。

自分のやっていることを好きになれる力。周りにいる人に惚れる力。そういった力こそが、いい仕事をしていくうえでは不可欠なのであろう。二人の匠と話をしたことで、そのようなことを再確認した。

コメント

_ 苗村屋 ― 2010年04月20日 09:22

「やっていることを好きになる」力、その通りですね。私の場合、決して仕事が楽しいとは言えません。日々、本当にいろいろなトラブルが発生するし、頭を抱えてしまうこともたくさんあります。

でも嫌いかといえば、そうではない。どこかに、トラブルを前にして、「よし、やってやろう」という自分がいます。困難を乗り越えた後に、振り返って、「少しは前進したかな」と思えるときが一番ですね。

_ YO ― 2010年04月20日 12:30

「惚れる力」、その通りですね。現状をポジティブに受け入れながらそこで最大限の努力をする。私はさらに周囲に感謝する気持ちを忘れないようにしています。そう、「惚れる力」と「感謝の気持ち」。

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