ブログ引越し2011年06月20日

約2年間お世話になったアサブロさんですが、このたびご縁があってライブドアブログに引っ越すことになりました。

新しいURLはこちら
http://blog.livedoor.jp/daisuke_iwase/

宜しくお願いします!

百年たっても後悔しない仕事のやり方2011年05月11日

社長の出口が3月(10日!)に出していた「百 年たっても後悔しない仕事のやり方
を遅ればせながら読むことができた。

印象に残った下りをいくつか紹介。

【古典から人生を学ぶ】

「中学生から高校生の始めの頃からでしょうか。私は多くの英雄や先人たちの自叙伝や伝記を読むたび、次のように考えるようになっていました。人間の一生は人智を越えた何か大きな力によって動かされているのではないだろうか。あたかも悠々と流れる大地に浮かぶように。」(p.6)

「『人間は巨人の肩に乗っているから、遠くを見ることができる』という、フランスの古い言葉があります。初見は12世紀のシャルトルのベルナールの著書に あるそうです。私はこの言葉の standing on the shoulders of giants というフレイズが好きです。この巨人とは何を指しているかというと、一般には古典の著者のことですが、私は教養そのものの擬人化された表現であると解釈し ています。私流に表現すれば、前述のように、『人間がどのように生きて、苦労して、バカなことをやり、社会を作ってきたか』そういうことをきちんと知って いる巨人なのです。人間がいつも彼の肩に乗っていれば、ということはすなわち、歴史の中で時代や社会の変化に翻弄されながら生き変わり死に変わりしていく 人間について学んで、そこから人が生きていくことの知恵を習得していれば、自分の短い一生での浮き沈みに簡単に負けることはない、ちゃんと遠くを(自分の 明日を)見る元気もついてくる、という意味だと、私は考えています。」(p.179-180)

【常識を疑う、なぜ?を考える】


「幼稚園の頃、私はなぜ太陽は落ちてこないのだろうと思いました。あんなに大きくて重そうなのに。『きっと誰かが、とても大きな人が、紐で吊っているんだ ろうな。でも紐も見えないな。なぜだろうな』。いつも空を見上げて立ち止まってしまうのでした。」(p.103)

【出会いを広げる】


「[初めての海外赴任にあたって]私が決めたルールは次の三つでした。
 ① 誘われたらどこにでも行くこと。
 ② パーティでは知人がいなくても最後まで会場に残ること。
 ③ 面会やさまざまな招待状は、内容を問わず先着順に受けること。ただし先約が日本関係のもので後から英国や諸外国のアポイントメントが入ったら、後者 を優先すること。」(p.84)

【チームの作り方】

「私は仕事のチーム(組織)は石垣と似ていると思っています。
 機械で切り出されて、一定の形になった石材を組み合わせて作られる現代の石垣は、見た目には整然としていますが、もろいものです。それは、管理職が自分 好みに人を集めたチームと似ています。金太郎飴みたいに同様な顔立ちばかりになりがちです。
 古い戦国時代に築かれた不揃いな角の多い大小の石を組み合わせた石垣には、整然とした統一美はありません。けれど多彩な石の面が見て楽しく、しかも風雪 に耐えて堅牢です。その理由は三角や四角などの角が尖った石を、たくみに組み合わせてあるからです。このような石垣の形が、求められる理想のチームの形だ と思います。」(p.163)

【組織の運営】

「働き蟻の集団では、20%が働いており、20%はまったく働いておらず、60%は働いていたり働いていなかったり、なのだそうです。そして、働いている20%の蟻を集団から除去してしまうと、残りの80%の中から、また20%の働くグループが誕生し、全体が再編成されて元の比率に戻るのだそうです。人間の作る組織でも、なんとなくありそうに思えます。」(p.36)

「もし仕事でマズイコトが起きてしまったら、失敗したと思ったら、自分で抱え込んでいても気が重くなるだけだ。だから大きな声で言いまくれ。『たいへんです。どうしましょう』と。周囲の仲間に上司に、場合によっては社長の私に。言えば気分も軽くなるだろう。起こってしまったことは仕方がないのだから、みんなで解決すればいいのです。三人寄れば文殊の知恵だから、みんなでうまく解決してしまおう・・・私は、いつもそれがベストであると考えています。
 そして解決をして、お客さまに迷惑をかけずに済んでよかったね、と軽くビールでも飲みながら、ところでなんでこんなことが起こったんだろうと考える、それが建設的であると考えます。ミスを犯してしまった人は自分で反省しています。責任を追及しても仕方がない。むしろなぜミスが起きたのかを考えて、これからの対策を考える。そのことのほうが、よほど生産的であると思います。」(p.68)

*****
「大人の仕事本」として、オススメです!

駄々こね王国、ニッポン。2011年04月12日

40兆円しか収入がないのに90兆円も使い続けたら辻褄が合わないことは小学生でも分かることだが、収入を増やそうと増税を提案しても、「財務省の陰謀」「先に削るべき無駄があるはずだ」と反対される。

収入が増えないなら支出を減らすしかないのだが、もっとも大きな支出である年金を減らすために受給開始年齢を引き上げようとしても、高齢者が反対する。

次に大きな費用広告である医療費について、保険料を上げるか、自己負担を増やそうと思っても、「弱いものいじめ」「姥捨て山」とマスコミに反対されるのでそれもできない。

ならば医療コストを合理化しようと、レセプトの電子化や、医療データの開示を迫ってみても、(無駄な投薬や検査を指摘されかねない)医師会が猛反対するからできない。遠隔医療を実現しようと思っても、同じく。

支出を減らせないので、やっぱり増税できないかと考え「まずは公務員が身を削れ」という主張を実現しようと思っても、労働組合が反対するから人員削減も給与カットもできない。

それなら上げ潮路線で行くしかないので、企業に頑張って稼いでもらおうと、できるだけ競争しやすいように減税したり雇用コストを下げようと思っても、「大企業優遇」と労働組合に反対されるので実行できない。結果、皆がジリジリ沈んでいく。「企業の競争力強化」がまっとうな政策として取れないのは、日本くらいではないか。

ならば莫大な金融資産を活用することで投資で稼いでいこう、と思って資本市場で投資ファンドが活躍し出したら「汗をかかないでお金を稼ぐのはけしからん」という風に検察も裁判官が反対するので、投資家が日本の資本市場から去っていった。

新しい産業を創ろうとちょっと尖った生意気な起業家が出てきたものの、本当に社会を変革しうる核心部分に迫ろうとしたら、メディアに猛反発を受け、検察の助けも借りて刑事犯罪人に仕立て上げられてしまう。

農業や医療・介護といった分野で規制の見直しをすることで新産業を育成しようとしても、業界が反対するので、実行できない。しょうがないので、政府の成長戦略と称して「グリーン・イノベーション」やら「ライフ・イノベーション」やら、誰も反対し得ない空虚な言葉を掲げ、お茶を濁す。

少子化で人口が減って行くのが困るので、移民を促進しようと思ってみても、外国人の看護師試験合格率は4%と、司法試験並にハードルを上げて、導入を事実上拒む。

結局、国民全員がいやいや駄々をこね続けるので、今は文句を言えない子供たちに負担を押し付けることになる。

この国を変えるのは、容易ではない。

地震保険について考えたこと2011年04月06日

アゴラに書いてみましたので、以下に転載します:
http://agora-web.jp/archives/1299708.html

今回の震災に伴う地震保険の支払金額は1兆円から2兆円の間と試算されている。

地震保険は損保各社が拠出して設立された「日本地震再保険(株)」が一旦全額を引き受けた上、半分を政府に出再し、残りの半分を損保各社にシェア割りで出すことになっている。そして、損害が2兆円に至るまでは民間と政府で折半して負担し、2兆円を超えた部分については1回の震災あたり総額5兆5千億円を限度として、政府が95%、民間が5%を負担することになっている。

昭和41年の創設以来、地震保険の契約者が払い込んだ保険料を民間と政府に振り分けて積み立ててきた結果、2010年3月末時点では民間部門で約1兆円、政府に1.3兆円の準備金が積み立てられていた。このように官民合わせて2兆円を超える準備金が用意されていたことは、今回のような震災の後でも保険金の支払いがきちんとなされると国民に安心感を与えた点で、評価すべきと考える。
(余談だが、今朝の報道によれば、ミュンヘン再保険やスイス再保険といった欧州勢の再保険会社が国内損保会社に支払う保険金が3千億円程度とのこと。損保全体の負担額を考えると、海外の再保険会社に応分の負担をしてもらえることになり、民間損保も上手にリスク管理をしていたように思える。なお、2010年の世界の自然災害による再保険金支払い額は4兆円に上ったそうだ。)

しかし、昨年秋の事業仕分けでは枝野議員が中心として、政府部門の「地震再保険特別会計」を廃止すべきとの評定がなされていた(もちろん地震再保険を無くせということではなく、財務省の特別会計から民間に移管すべき、との評定であったが)。しかし、これは私に言わせれば、「特会によって財務省は焼け太りするからけしからん、とにかく無くすべきだ」という安易なロジックに基づく判断であり、同意できない。制度に大きな不都合が見つからない以上、そのままにすればよいのではないか。if it ain't broke, don't fix it, as the saying goes.

確かに、一般的に特別会計の中には省庁の既得権益維持と無駄に繋がっているものも少なくないかも知れない。しかしことにこの地震再保険についていえば、 1.3兆円の積立金は保険金支払いという明確に限定された使途のために存在するものであり、恣意的に使う余地が極めて少ない。運営にかかわる費用に関する会計も比較的明朗である。資産とともに負債を減らしたところで、財政が改善する訳でもない。また、日本地震再保険という一つの民間組織に国民の地震保険に備えるすべての準備金を置いてしまうより、卵は二つのカゴに分けて持っておいた方が安全のように思える。

なお、日本地震再保険のトップには財務省OBが就任しているため「天下りは許さない!」という意見もあるかも知れないが、他の役員には東京海上や損保ジャパンを引退した人材が就任しているので、(感情論は除けば)国民にとって実質的に問題があるものとも思えない。

民主党が事業仕分けを始める前には「特別会計は無駄の温床」と考えられたが、今となっては「特別会計に入れておいたおかげで、政治家に無駄遣いされずにへそくりとして温存されていてよかった」とすら思える。一般会計のどんぶり勘定の中でやられていたら、地震のための積立金も、子供手当に回っていたかもしれないわけだから。個人的には、増税を唱え続ける財務省の方が、財政の規律を守ろうとしている点においては、長期の国家ビジョンを持たず、選挙目当てのばらまきをやりがちな政治家よりもよほど信用ができる。

真に大切な問題から目をそむけ、安易なスケープゴートとして官僚バッシングが流行る風潮の中では言うのがはばかられるが、後世から振り返れば、(徴税権を盾に)政治家に対して財政の「最後の番人」として機能していた大蔵省を90年代に解体し権力を劣化させたことこそが、我が国の財務規律のタガを外してめちゃくちゃにした決定的要因、と評されるかも知れない。

特会の見直しよりずっと重要な問題は、地震保険の加入率がいまだ23%にとどまっていることである。「地震保険は対象範囲が狭い上、保険料が高い」と指摘する声もある。確かに、地震保険は火災保険とセットでしか加入できず、火災保険金額の30%~50%が上限となっている。また、マスコミの報道では「満額で受け取れる例は少ない。建物の時価が基準になるほか、倒壊・傾斜の条件が厳しく、阪神大震災時の支払額は1件当たり平均100万円程度。今回も200 万~300万円にとどまる見通しだ」(日経新聞2011年4月4日)と指摘するものもある。現場で損害の認定がどのようになされているのか分からないが、例えば「全損」に該当するには「損害額が建物の時価の50%以上」と明確な基準は存在するし、昨今の金融行政も保険会社に消費者保護を強く求めるようになっているので、一般人の期待から大きくかい離するような運用がなされる可能性は小さいと考える。

消費者の利便性の観点からは商品設計上、改善の余地は色々とあるかも知れないが、それは特会を廃止しても変わるわけではなく、今の枠組みの中で実現できることである。財務省の焼け太りを警戒するよりは、私はむしろ商品設計と支払いの現場を担う民間損保に対して、金融庁が消費者保護の観点から十分なガバナンスを働かせることこそが、重要だと考える。

地震保険の加入率を高めるために、政府はもっと積極的に動く必要がある。政府が大きな金額を補償するとしても、そもそも地震保険の未加入者はその恩恵を受けることはできない。損害保険会社からすると地震保険は利益が上がらない商品であるから、積極的に販売するインセンティブがない。いまは、地震保険の保険料に一定の税控除を認めるという形での政策的な誘導がなされているに過ぎないが、今後はこの控除枠を拡大することや(場合によっては生命保険料控除の枠をこちらにシフトしてもいいかも知れない)、損保各社が積極的に販売するような経済的なインセンティブを付与することも検討に値しよう。

新人研修中の皆さんへ2011年04月04日

4月からライフネット生命にも新入社員が2名入り、1月入社(海外の大学卒業)の1名と合わせて3名となった。新卒入社者は、文字通り「純粋培養」ということで、今後、会社のDNAを背負って、中長期的に会社をけん引していく存在として成長していくことを期待したい。

さて、我々のように中途入社が9割5分を占める会社は、確立した研修プログラムがある訳でもなく、お互い試行錯誤をしながらやっていくことになる。

当社の新人に話した内容は、新人研修中の他社の皆さんにも大切だなと思ったので、ここでメッセージとして伝えたい。



「新人研修、超楽勝だぜ~」

と言っている人がいたら、それは you've got it totally wrong! と言いたい。

研修は、誰のためにあるのか?会社のためにあるのではない。皆さんのためにあるわけだ。

新入社員にとって、会社は、図書室のような書籍、過去プロジェクト等の資料、知識と経験を豊富に持った先輩など、学ぶための材料がたくさんある。

自分を鍛えるためのフィットネスジムに例えるなら、最新鋭の器材がずらっと並び、さらにインストラクターも多数いるジムの会員権を手にしたようなものだ。

そこで、ジムに行って、言われた通りの最小限のメニューをこなして、すかすかの自転車をこいで、「このジム、超余裕~」と言っても、何ら意味はないことは分かるだろう。

いかに、自分を高めるために、豊富なリソースを使いこなすか、その「使いこなす力」が問われるのである。これを「新人力」とでも名付けようか。

会社の豊かなリソースを使いこなして、いかに早く一人前に成長するか。それは、想像力を要するし、新しいことを提案する行動力も要するかもしれない。しかし、1年生というのは、多少は無謀なことが許される、失敗を恐れずに挑戦できる、貴重な時間でもある。

例えば、ライフネット生命だったら・・・
・ 「生命保険入門」「生命保険のカラクリ」を皆で読みこんで、著者を囲んで質問攻めにする
・ 過去の「生命保険経営」「保険学雑誌」などの論文を5年分くらい読み込み、自分でまとめてみる
・ これまで3年間、ライフネット生命が取ってきたマーケティング施策を整理し(「ネットで生保を売ろう!」が参考になりそうだ)、それぞれの狙い、実際の効果などを教えてもらう。ついでに、新卒向けのマーケティング施策を自分たちが考えてみて、添削してもらう
・ 目の前に座っている会計士に、会計の基礎を教えてもらう
・ たくさんいるアクチュアリーに、保険数理を教えてもらう
・ 財務の人がトレーディングしているので、運用について教えてもらう
・ 医療保険と社会保障の仕組みを勉強する
・ たくさんの新人採用をしてきた人がいるので、彼の視点から見て「伸びる新人/伸びない新人」についてレクチャーしてもらう
・ 日経の「経済教室」を毎日読むようにして、分からないことを周囲の人に質問攻めにする
・ 英字新聞の記事を何か選んで読んで、分からないことを分かりそうな人に質問攻めにする
などなど

ちなみに、当社の出口は「自分は新人のときに、新聞は最低2紙に目を通してから会社に来いと言われた」と何度となく著書で書いています。これが意味することは・・・

やれることはきりがないし、それらを順序だって整理してあげるのが人事の役割でもあるのだが、すべてが理想通りには準備できないことを考えると、どれだけ早く成長できるかは、自分からどれだけ提案し、行動できるかにかかってくるわけだ。

また、自分の経験からすると、新人時代にどれだけ自分に負荷をかけて基礎体力をつけることができるかで、将来、大きく影響してくるような気がする。部活で言えば、走りこみのようなものか。

ちなみに、大前研一氏は新人時代、いつも誰よりも早く出社し、誰よりも遅くまで残って、過去プロジェクトのファイルを読み漁ったそうだ。少し違うが、僕は新人の頃は鬼マネージャーに「岩瀬ほど頻繁に自分のところに相談に来る人はいない」と言われた。

いずれにせよ、これからは入社したばかりの皆さんにとっては素晴らしい1年となるでしょう。目の前に与えられたことに満足することなく、志を高く、自分でチャンスをつかみ取ろうというつもりで、がむしゃらに頑張ってください!

新著が出ました!2011年03月25日

アゴラで連載をしていた「ネット生保立ち上げ秘話」に大幅加筆した新著、

「ネットで生保を売ろう!」(文藝春秋社)

が本日から発売です。

http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784163738901

本書は2006年1月の、投資家である谷家氏、4月に起業のパートナーである出口(現ライフネット生命社長)との出会いから始まり、132億円の資金集め、40名を超える多彩な仲間のリクルーティング、新しい生命保険会社のオペレーション構築、金融庁との折衝と免許交付、そして開業後は何をやっても顧客が増えない時期の苦労話から、「ゲリラマーケティング」による安定した成長軌道に乗るまでの軌跡、そしてライフネット生命の将来に懸ける思いを綴ったものです。

一部、内容をお読み頂けるようにスキャンしてみました:

・目次 http://wimg.netseiho.com/book2011/contents.pdf
・童顔の投資家  http://wimg.netseiho.com/book2011/baby_faced-investor.pdf
・ネットで生保を売ろう http://wimg.netseiho.com/book2011/netseiho.pdf

全力で駆け抜けている間は気がつかなかったのですが、いざ文字に落として振り返ってみると、起業物語は実に人間臭いドラマだったのだ、と感じています。本書を読んでくれた友人が送ってくれた感想も、同様でした:

「優れたビジネスストーリーというのは人間的な叡智に満ちていて、凡庸な小説よりも『文学』なのだと思います。この本を読んでそう感じました。」

留学から帰国した2006年から5年間、素晴らしい仲間たちと必死に挑戦してきた物語がここにあります。手に取って読んで頂ければ、これほど嬉しいことはありません。

日本政治の断層線2011年03月22日

ワシントン・ポスト紙に「日本復興に必要なこと」なる小論を寄稿したところ、"The Political Fault Line of Japan"なる見出しで掲載してもらえました(オンライン版に新たに設けられた投稿コーナーではありますが)。原文は同サイトをお読み頂くとして、下記に和訳をつけてみました。こういった主張が外国のクオリティペーパーを介して逆輸入で、我が国の指導者の目にも触れることとを期待しつつ。

http://www.washingtonpost.com/blogs/guest-insights/post/the-political-fault-lines-of-japan/2011/03/18/ABXNLar_blog.html

日本政治の断層線

致命的な地震と津波が日本の東北地方を襲ってから1週間が経過した。日本国民は物理的、精神的、そして経済的にも打撃を受けたが、強い力をもって今回の苦難を耐えてきた。政治の指導者たちは昼夜を徹して情報が少ない中、難しい意思決定をしてきた。自衛隊員や警察官は凍てつく寒さの中、廃墟に埋もれる生存者を賢明に捜し続けている。勇敢な技術者たちは健康を危険にさらして起こりうるメルトダウンを防ごうと必死の作業を続けている。企業は義捐金、食糧、衣類、その他の生活必需品を最も被害を受けた地域に送り続けている。そして国民は明日が予想できない日々の中でも平静を保ち、連帯感をもって生きている。
今回の地震とその後の悲しい出来事が我々に何かを教えてくれたとしたら、それはかつてこの国を敗戦の焼け跡から経済大国に建て直すことを可能にした、私たち日本人の美徳や属性を思い出させてくれたことではないだろうか。政治的ないざこざは当面休止し、野党も必要な支援を提供するために必要な協力をしている。子供手当や高速道路の無料化のように、総選挙を勝つためのバラマキではないかと非難された政策は、救済策の財源を確保するために延期されるようである。

短期の関心は被災地の救援に寄せられるだろうが、これまで以上に決定的な重要性を持つのが、中長期的にこの国をどのようにして復興させていくかという問題である。津波は我が国の債務や経済の構造的な非効率までも洗い流した訳ではない。日本国民に安定と真の意味での救済を提供するためには、経済を復興させ、持続可能な成長の道に乗せるための大胆な施策を取ることである。

増税と社会保障の再設計を含む財政再建が急務であることは言うまでもないが、同様に重要なのは、生産性の改善をもたらす政策への転換である。過去20年の経済的な停滞をもたらしたもっとも大きな要因は、低収益の「ゾンビ」企業と、非効率な社員を過度に守る政策である。これらは健全な競争を歪ませ、イノベーションと生産性の改善に不可欠である「創造的破壊」と雇用の再分配のプロセスを妨げてきた。加えて、ここ数年の資本市場におけるルールの変化は事実上敵対的買収を不可能にし、ケイレツ的な持ち株の復活を促してきた。この結果、アニマルスピリットを去勢された経営者たちは資本を投下してリターンを向上するインセンティブを持たないまま多くの現預金の上に胡坐をかき、サラリーマン人生の最後の数年を終えようとしている。

多くの政治家はこういった構造的な問題を長らく認識してきたが、これまで行動を取らずに来た。それはたった一つの理由である:選挙に負けるのが怖いから。過度に力を持った参議院は恒常的なねじれ国会を生み、18か月に一度、国政選挙を求める選挙制度と相まって、過去20年で14人の首相が退陣させた。このようなことが起こるのはせっかちな選挙民や無能な政治家が理由ではなく、設計の悪い、機能不全の政治システムが原因である。

それが物理的であれ経済的であれ、もはや我が国がさらなるショックを耐えられないことは明らかである。震災では多くの勇敢な人たちが、国の破たんを防いでくれた。今度は、我が国の指導者たちが政治的な勇気を見せる番である。日本の一番よいところを引き出すために不可欠な、厳しい政策決定を行い、我が国を再び持続可能な経済成長の道に乗せることが待ち望まれている。

ダボス会議体験記 (7) 「二人の食卓」2011年03月02日

Table for Two:「二人の食卓」

世界に住む70億人のうち、10億人が飢えに苦しむ一方、10億人が肥満など食に起因する生活習慣病に悩んでいる。WHO(世界保健機構)によれば、世界の死亡と病気の原因は、第一位は肥満、第二位は飢餓であり、戦争、事故、感染症などを大きく上回るという。

これは何とも皮肉なことではないか?

この深刻な食の不均衡を解消するため、日本で創設されたNPO法人が "Table for Two"(TFT)。アイデアは2006年6月、カナダ・バンクーバーで開かれた世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダー(YGL)会議にて、 3人の日本人YGLによって生まれた。
仕組みは極めてシンプル。提携企業内カフェテリアの定食を購入すると、1食につき20円の寄付金が開発途上国に送られ、子どもの学校給食になる。

20円というのは、開発途上国の給食1食分の金額。つまり、先進国で1食とるごとに開発途上国に1食が贈られるという仕組みになっている。2007年にスタートして以来、6百万食を超える食事が提供されたそうだ。

先進国の私たちと開発途上国の子どもたちが、時間と空間を越え食事を分かち合う。そのコンセプトのシンプルさと、「二人の食卓」という直感的にイメージしやすいブランディングがあいまって、ダボスコミュニティでも認知が高まりつつある。2009年にはニューヨーク支部が設立され、コロンビア大学を中心に活動が行われているそうだ。

このアプローチが画期的だと思うのは、単に「お腹を空かした子供たちに寄付を」という募金活動だったら、人々の共感を必ずしも十分には集めない。しかし、自分が座る食卓の向こう側に途上国の子供がいて、食事を共にしながら、少しだけ分けてあげる、そういうコンセプトにしたてあげたことで、広く支持を集めることに成功したわけである。

また、このようなコンセプトは「食べ残しはいけない」という日本の食文化ならではのものだろう。そして、日本人YGLがイニシアチブを取って、実際にこのような形で活動をしていることはとても誇らしく思う。

ダボス会議二日目の午前中では、コロンビア大のジェフリー・サックス教授、三菱商事の小島会長、TFT創設者の古川元久前内閣官房副長官による記者会見が行われた。

このようなTFTの取り組みは、ダボス参加者の間では高く評価され、日本へのリスペクトの気持ちを高めている。思うに、国際社会において他国に認められ、相応の影響力を発揮するためには、札束を積んで多額の資金を拠出することではなく、このようにクリエイティブなアイデアを打ち出し、どんどん実行していくことが重要なのではないか。

人々の心を動かすには、目的を達成するためにストレートにメッセージを伝えるだけではなく、上記のようなパッケージング、より人々を行動に促すようなマーケティングが不可欠なのである。

世界の組織図を設計する

無事に記者会見が終わったことを見届けると、次のランチへ徒歩で移動。10以上あるランチプログラムの中から選択したのは、"Rebuilding Global Governance"。「グローバルガバナンスを立て直す」。

ちなみに、「アジアの断層線」と名付けられたランチで、川口順子元外務大臣らアジアの要人がパネリストとして話すイベントもあったが、アジアの話はアジアで聞けばいい、何もダボスまで来てアジア人で固まる必要もなかろうと思って、より広いテーマを対象としたランチを選んだわけだ。

ホテル会場に着き、長靴を脱いで皮靴に履き替えていると、入口で講演者の一人である韓国人に会った。

Il Sakong博士は財務大臣や大統領の経済担当顧問、大使などを歴任した韓国政界の大物。欧米各国の首脳らとのパイプも太い。昨年韓国が主催したG20サミットでは運営委員会の委員長として各国との調整に飛び回り、韓国がG8以外の国として初めて無事にサミットのホストを務めあげた際の立役者だった。

「昨年12月、ソウルでお会いしました。その時に、私たちYGLに頂いたアドバイスは今でも心に残っています。私たちは尋ねました。サッチャー、レーガン、様々な歴史上のリーダーと親交がある博士からみて、世界の舞台で活躍するリーダーの条件とは何かと。

すると、次のようにお答えになりました。

『グローバルリーダーであるためには、いつも十分な時間をかけて、世界のニュース、新聞、週刊誌、月刊誌、季刊誌に目を通せ。いつまでも貪欲に学び続ける、学徒たれ。そして、何よりも、健康であれ。尊敬されるリーダーたちは皆、とても健康だった』

今日も博士のお話を再び聞きたいと思い、このランチを選びました」

このように話しかけると、嬉しそうにして僕の袖を引っ張った。

「あのときに君もいたのか。ほら、こちらに来なさい。私の隣で食事をしよう」

この少人数ランチは各テーブルに講演者がいて食事をしながら皆の議論を聴くというものだが、隣のテーブルにはパスカル・ラミーWTO事務局長、奥にはリチャード・ハース米外交問題評議会会長、他にはサウジの国連大使を務めた皇太子とインドネシアの通商大臣がいた。

中心的な論点は、国連が機能しなくなっているなか、G20への意見反映をより多くの新興国が求めていることだった。しかし、20カ国ですら意見調整は難しいのに、それ以上ステークホルダーが増えたら、意味のある議論ができるのか。

国連、WTO、G20。それぞれ、正統性、機動性、実効性の点でトレードオフがある。世界をどのようにして govern していくべきなのか。それはあたかも、世界を一つの組織と見なして、上手く運営していくための理想的な組織図を描くような取り組みだった。

僕の隣に座るアジアの老練な政治家がマイクを手に取り、語りだすと、他の講演者の誰よりも的確で、重みのある話をした。欧米の著名人よりも、参加者は彼の話にうなずいていた。彼の祖国は国際社会ではまだ必ずしも十分な影響力を持つわけではない。しかし、聡明な個人の心を動かす言葉には、誰しもが敬意を隠さない。

隣国のリーダーのこの席での活躍を、なぜか自分のことのように嬉しく思った。話を終えてマイクを離すと、彼は着席し、僕にウィンクをしながらナイフとフォークを再び手に取った。

http://agora-web.jp/archives/1264423.html#more

職人2011年02月26日

---- ところで、このお仕事(注:靴磨き)の醍醐味は何ですか。

キンチャン  どう言うんでしょうか、靴が栄養をもらってよみがえると言うんでしょうか。愛情をもってシューシャインしたら、靴は必ずそれに応えてくれるんです。靴がそのよろこびを表現している手応えを感じているときの、磨く側のよろこびというのは、ちょっとたとえがたいものがあるんですよ。お客さまにも「おお、きれいになったな!」とよろこんでいただけるわけですけど、我々はそれ以上の喜びを得られるんです。靴がそうやってよろこびを表現する手応え・・・この仕事の醍醐味は、もうそれに尽きるって思いますね。

(「帝国ホテルの不思議」日本経済新聞出版社、p.273より)

この「帝国ホテルの不思議」はホテルで長年働くベテラン従業員、しかも靴磨き、厨房、客室サービスなどホテル運営を支える裏方の皆さんの人物像を中心にインタビュー形式で直木賞作家がまとめている、とてもいい本。

いい仕事というのは、このように仕事の対象に愛情を持ち、かつ自分の仕事に誇りを持つことから生まれる、そのようなことを実感させられる。

ライフネット生命も、このような職人集団を目指したい!

ダボス会議体験記(6)2011年02月23日

 2010年1月27日、ダボス会議2日目。朝7時半過ぎ、本会議場のシャトルバス乗り場で待っていると、テレビカメラを肩に担いだ男性クルーとマイクを手にした女性リポーターに声をかけられた。

「寒いですね、早朝のダボスは。」

「そうですね。こうだろうなと思って、日本特製のカイロをたくさん持ってきて、背中とお腹、更に両太腿にも貼っています。知ってます?ホッカイロ。」

 女性記者は好奇心溢れる目で僕の方を見た。
「え。何それ?!今の話、面白いので、ちょっともう一度カメラの前でしてもらってもいいですか?」

 かくして僕は、取材に来ていた欧州の金融の専門番組に、「全身ホッカイロの男」として出演することになった。実際に映像が使われたかどうかは、不明だが。

・・・・・

 前の晩のディナーは少人数でディスカッションを行う「商業の歴史(History of Commerce)」を選んだ。5つのテーブルに各12名ずつ座り、ディスカッションを行う。司会役を務めるのは、「マネーの進化史」などで知られる英国スコットランド出身の大歴史家、ハーバード大のニーアル・ファーガソン教授、800年にも渡る債務危機の歴史を綴った大著「今回は違う(This Time is Different)」で話題を集めた、同じハーバード大のケネス・ロゴフ教授、政治リスク研究シンクタンク「ユーラシアグループ」の代表、イアン・ブレマー氏等5名。

(続きはこちら ⇒ http://agora-web.jp/archives/1254260.html