高齢化社会と保険会社の役割2010年07月05日

先週、世界第二位の保険グループであるアクサグループのCEOの話を伺う機会に恵まれた。

曰く、これからすべての先進国が社会の高齢化という問題に直面する。そこでは、まだ元気な60歳が仕事を退職し、人口が減りつつある勤労世代がその後の生活を支える、という構図は成り立たなくなっている。

そこでは、定年制の柔軟化、年金の負担と給付を再設計する必要があるが、民間保険会社が果たしうる役割も大きい。40歳から備えを始めてもらい、長寿リスクを皆でシェアすれば(いわゆるトンチン年金の発想)、財政的には支えられるはずだ。

実現するには色々と課題があるのでしょうが、長寿社会も保険会社にとってチャンスと捉えて、従来の年金商品(死亡時に積立金が返却され、トンチン性がない)ではない、新しい商品が出てくる環境が整うことを、期待したい。

ネット選挙と世代間の不公平2010年07月12日

ネットやTwitterだけ見ていると、多少は選挙が盛り上がるのかと思っていたのだが、蓋を開けてみると投票率は57.9%で前回を下回ったそうだ。感想としては、「これで日本経済がよくなるのかどうか、よく分からない」結果だった。比較的 pro-business な政策を主張しているみんなの党の影響力が大きくなったことは、歓迎すべきなのだろうが。

選挙の大きな争点とはならなかったのだが、わが国において取り組むべきもっとも大きな課題の一つが、世代間の不公平である。

既に年金・医療を中心とした社会保障において、若い世代が割を食う、といったことはよく報じられている。「年金は払うだけ損だ」みたいな記事はよく見かけるし、書籍でも
「孫は祖父より1億円損をする 世代会計が示す格差・日本」
「若者は、選挙に行かないせいで4000万円も損している?」
といったものが出版されている。

このように高齢者優先の施策が取られる理由が、若者の投票率が低いことにある。ざっくり言うと、60代の投票率が75%であるのに対して、20代は35%だそうだ。確かに自分が政治家だったら、ただでさえ人口が少ない上に投票率も低い若い人たちの言うことに、耳を傾けるインセンティブは小さい。

若い世代の利益を政治に反映させるためには、まずは彼ら(我ら)の投票率があがらなければならない。この点、ネット選挙(選挙活動だけでなく、本来はネット投票も含む。グーグルとかに発注すれば、セキュリティ上問題ないシステムを、超安価で作ってくれそうなのに?)の解禁・普及が果たす役割は大きい。

昨日、参加した座談会で聞いたのだが、ネット選挙に強く反対している政治家も官僚もいないそうだ。たまたま、今回は菅さんが国会を早く撃ち切って選挙に入ってしまったため、成立に至らなかっただけ、とのこと。

選挙がスタートすると、皆が自粛してしまい、ぴたりと政治に関する言論が途絶えた。これは健全ではないと思う。また、ネットやTwitter上の「世論」と、実際の投票行動においては大きな乖離があり、これもネット世代の感覚とリアルの投票行動が結びついていないことを表しているだろう。

そんな理由で、世代間の不公平を解決するためのひとつのきっかけとなりうる点で、ネット選挙が解禁されることを、期待したい。もちろん、それがすべての問題を解決してくれるわけではないが。

アウトプットのススメ2010年07月14日

情報をインプットするのと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのは、自分の中でそれらの情報を咀嚼し、話したり書いたりすることで整理することである。

趣味のための読書ならさておき、仕事のための情報インプットであれば、それを実際のビジネスで使いこなせないとしょうがない。多くの場合、それは自分の言葉で言い換えることで、初めて自分のものとなる。

多くの情報を流し読みするよりも、限られた情報を何度もなぞり、自分のものにした方が、ずっと価値がある。以前は、インプット99:アウトプット1 くらいだったが、最近ではインプット70:アウトプット30にできたらいいな、と考えている。

今日は、一緒に商品開発をやっていた同僚が、新商品についての論文「ディサビリティ市場の発展と課題」を書き上げ、学会誌に投稿をした。

http://job.rikunabi.com/2011/media/sj/work/business/business_vol83.html

彼も最初は、「論文・・・書けないっす」と言っていたのだが、商品を作る過程で非常に多くの情報を集め、多くの論点について悩み、考えた。論文を一つ書くのは簡単な作業ではないが、商品開発にかけた時間に比べれば、微々たるものだ。その僅かな追加の時間をかけることで、その経験が忘れ去られることなく、大げさに言えば「永遠」になるわけだから、やらない手はない。

何かを本気で勉強したかったら、それについてブログのエントリーを書くか、本を書くつもりでやろう!それが一番、内容の深い定着に繋がると思う。

筋トレ2010年07月20日

進化し続けない企業は競争で勝ち残れないのと同じように、あるいはトレーニングを続けないアスリートが勝てないように、個人もプロフェッショナルとして成長し続けない限り、いい仕事に恵まれなくなってしまう。

もっとも大切なのは目の前に与えられた仕事に全力で取り組んで、誰よりも成果を出すことなのだろうが、それに加えて、常に新しいことを学び、新しい挑戦をし続ける必要がある。いわば、ビジネスプロフェッショナルとしての「筋トレ」を続けることだ。

というのは頭では分かっているだろうが、実際に日常業務を持ちながら、新規のことに手を出すことは容易でない。僕の横にも、「あとでよむ」とされた本が山積みになっている。

そして、ここでいう「学び」とは、筋トレのように、心地良い、ときには心地悪い負荷がかかっているものでなくてはならない。

漠然とビジネス書をめくったり勉強会に参加することだけではなく、受験生時代にそうだったように、頭が擦り切れるまで考えたり、眠い目をこすってまで何かを記憶したり、書き留めたりするような、プレッシャーがかかっているものでなくてはならない。

ずっと筋トレを続ければ必ず強くなれるように、ビジネス上の学びや挑戦も、このように負荷がかかる状態を継続して続けることができれば、必ずじわじわと力になることだろう。

さて、筋トレするか。

シンガポール2010年07月30日

保険の学会で発表するために、シンガポールに行っていました。現地では会議でネット生保を国際デビューさせることができたほか、シンガポール人のHBSの同級生たちや、投資家の方々にお会いすることができて、なかなか有意義だった。

さて、シンガポールにいると、政府が強い意志を持っていれば(もちろん同国の場合はいくらかの自由を犠牲にしているのでしょうが)、なんでもできるんだな、ということを痛感させられる。マレー系と華僑の人たちで成り立つ国で、タクシー運転手まで含めて国民全員が英語を話せるなんて、我々の感覚で考えたら「絶対に無理」と思うことだろう。なんせ、一私企業が公用語を英語にする、といっただけで、あれだけ多くの部外者が騒ぎたてる(そして反対する)のだから。

しかし、国の将来のあり方について明確なビジョンを持ち、それに基づいて一つ一つ手を打っていくことで、20-30年単位で見たときに、確実にそれが成果を出すわけだ。シンガポールはその成功例だろうし、今の中国は着々とそのように手を打っているのだろう。

かといって、国に何かを頼って、嘆いているばかりでも仕方がない。身の周りのことでいいので、自分にできることを精一杯やろう。ライフネットの国際化。英語と中国語の社内レッスンを、今度スタートする。いつか、海外展開もしたい。今年も本を2冊くらい出して、生命保険に関する情報発信を続けることで、一人ひとりがinformed decision making をできるようにし、わが国の個人マネーの流れをいい方向に変えていきたい。若い世代が選挙に行くようになるよう、自分の周りでできることをやっていきたい。などなど。

ちなみに、雨季のシンガポールより、東京の方がずっと暑かったです。意外なことに。