現場100回2009年10月01日

以前、グロービスの学生たちが自主的にやっている勉強会で、「ライフネットをケーススタディとして取り扱い、分析して提言をしたい」というお申し出を受けた。

具体的には、6-8名が属するチームが3-4つ、1カ月ほど準備をして、発表を行う、というものだった。

実は、前にも同じようなことを試したことがあったが、あまりうまくいかなかった。皆さん、限られた時間の中で必死に調べて頂き、必死に考えて頂いたのだが、いくつかの飛んだアイデア以外は、あまり参考になるものがなかった。

考えてみれば、当たり前のことである。僕らは朝から晩まで、そしてもう3年間も、ひたすら「ネット生保が成功するには」ということを考えてきた。頭で考えられることは、擦り切れるほど、何回も何回も、考え抜いてきた。

だから、わずかな時間で頭だけで考えて頂いたものには、なかなか新しい発想は出てこない。

そこで、このときは以下のようにお願いした。商品は既存のものありきで考えて下さい。そして、ひとりひとりが一ユーザーの立場に特化して、あまりMBAっぽく考えずに、生の意見をたくさん出して、それを提言してください、ということ。

結果として、大成功だった。とくに、一番参考になったチームは自ら「現場100回」と名前を付けて、ウェブサイトを何十人に使ってもらった感想をまとめたほか、自分たちでライフネットのコールセンターに何十回も電話をかけ、他社のコールセンターにも電話をかけ、その通話内容を録音し、僕たちの前で聞かせてくれた。

うすうすと感づいていたことが・・・リアルなお客様に言われて、ショッキングであり、とても参考になった。

ということで、主に他人のビジネスの評価についてなのですが、自分がどこで勝負できるのか、それは「評論家」よりも「リアルな一人の顧客」という目線であることの大切さを、改めて感じた、ということを伝えたかったのです。

コメント

_ エストシ ― 2009年10月01日 15:20

前半の話、よく体験しました。生ぬるい企画を聞かされるものですね。その点、人手をかけて容易に生み出せるのは現場検証かもしれませんね。それはそれで効果十二分ですね。

_ kawata ― 2009年10月01日 22:49

生の意見として少なくとも私はライフネット生命に入らせて頂いてよかったです。別に入ってからけがも病気もなく、特別お金を貰った訳でもなんでもないのですが・・20代と40代の女性が妊娠してから出産できる割合が半分だと聞くと、新しい志に寄り添っている自分が好きです。

逆にどうなればよりよくなるか・・と聞かれると難しいです。第3者的には失敗を恐れず、自分の力を過信せず、色々な方を巻き込みながら「素直」に前に進まれている姿以上に知名度を上げる安易な方法はないのかな・・と感じています。テレビでも、雑誌でも、何でもやってみてください。それを見ても失敗したら勿体ないなんて、顧客の一人である私が思わないのは志に惚れているからでしょうか。

ただ一つ、長い人生共に過ごせるかは、やはりちょっとした季節の挨拶や対応です。例えばいきなり担当が変わりゼロから話をするなんてあり得ないわけです。
このちょっとした「元気ですか?」なんて聞かれる事をしっかり維持して頂く事が私としては一番重要です。それができない人が大きな事ができるわけないからです。

コールセンターに悩み相談したくとも何も悩みがない悲しい男からでした。多くの仲間が入っていただく事を祈っております。

_ 松嶋貴明 ― 2009年10月02日 00:33

岩瀬さん、こんばんわ。ご無沙汰しております。
ビジネススクールで学ぶものとして非常に興味深く拝見しました。まさにおっしゃるとおりですね。
一方で、ライフネットを題材として学ぶ、という視点ではこれほどまで贅沢な機会はあまりないように思います。
グロービスの方々にとって、単に御社の概略をなぞるだけではわからない沢山の気づきがあったのではないでしょうか。
ケースライティングを控えた身には非常に参考になるエントリーでした。
出口社長の講演も楽しみです!とても贅沢なお時間を頂戴できるということで私の仲間も非常に興奮しています。
岩瀬さんにまたお会いできる日を楽しみにしています。

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