ホームページ刷新!2009年07月01日

本日7月1日をもちまして、ライフネット生命のホームページが全面リニューアルされました!まずはご覧ください。

http://www.lifenet-seimei.co.jp/
(表示が崩れる場合は、ブラウザの「更新」ボタンを押してください)

開業以来、細かい改善はずっと続けてきたのですが、大きなリニューアルはこれがはじめて。実際に使われてきたお客様からの多くのフィードバックを反映して、新しいページとなっています。

あわせて、昨月福岡限定で放映されていたテレビCMの映像も見ることができます。ぜひ、一度ご覧ください!

http://www.lifenet-seimei.co.jp/cm/index.html

「らーいふねっと せいめい~♪」

のメロディが、耳に残ります。

いずれもご覧頂き、いろいろと感想を頂ければ幸いです。

GNP 営業のベストプラクティス2009年07月02日

大切な新聞記事

 最近一月の二十日の東京朝日新聞の家庭欄に「我が家の自慢」といふ題でその頃連載されていたものの第六で「母の檜」総務、小林珠子女史の談である。

 その見出しは、「ほがらかな家庭内閣」となって居り、主人が総理大臣、自分(小林女史)が文部大臣、長女が大蔵大臣、次女が司法大臣、息子3人を外務大臣とする家庭内閣を作り、家族会議を開き、一家の財政問題を論じ、計算を立てて、ほがらかにユーモア的に暮すといふことが前半に書いてあり、その後半に次の様なことが書いてある。

 「また子どもが生まれ落ちるとすぐ、その教育の事を考へましたが、私達には少しの恒産もないので、まづ子供が一人生れるとすぐ経済の許す額だけ、主人に保険に入ってもらつたのです。いづれも二十年立てば取れる養老保険で、主人が壮健でいてくれれば、やがてそれが子供の教育費となり、娘のお嫁入りの助けとなるのです。貯金はどうしても使ひたくなるのが人情で、殊に私のやうに気の弱い者にはさう思はれるので保険にしたのです。・・・」

 私は、これを見て、これは絶好の募集資料だ、と思った。早速これを、切り抜かうかと考へたが、待てしばし、之を切り抜いては価値がない、このまま新聞一枚を持っているに限ると、大切に自分の鞄の中に治めた。そして早速、その日の訪問予定先である田口氏の面会に、之を利用することに決めたのである。
   
   (中略)

 私は予定の如く、鞄の中から例の新聞紙を取出し、之を田口氏の前に差出し乍ら

 「これは今日の東朝ですが、ここを御覧ください。それを見て下されば、私の用件は自然判りますから。」

と、云った。田口氏は一寸怪訝な顔をし乍ら、右の記事を読初め、私は悠然と煙草を燻らしていた。
 しばらくして、之を読み終へ田口氏は、笑ひ乍ら、

 「よく判りました。この件は、宅の大蔵大臣とよく相談して置きますから、二三日しても一度御出でくださいませんか。」

と云はれる。そこで私は、

 「御尤もですが、幸ひここに家政顧問も来て居ることですから、もし御差支へなければ、ここへ大蔵大臣閣下にも来て頂いて家庭閣議を開いて頂く訳には行きますまいか」

とユーモアを混ぜて、願って見た。 

 やがて、奥様が赤ちゃんを抱へて表はれ、新聞を見て、

 「そのことですか、それならば今朝拝見しました。大変に結構なことで、流石に「母の檜」の総務さんだけに、よく考へてらっしゃると感心しました。主人にも話して是非宅でも実行して貰ふことにしようと考へて居た所です。」

 田口氏はこれを聞いて

 「何だ、御前はもう見ていたのか。こりゃ驚いた」
 「ネー貴方、丁度こうして御出で下さったのも何かの縁でせうから、早速都合のつくだけ加入しませうよ。」

 こんな風で、少し唖然としている、私を前にして二人の間に小声で相談が始まり、保険料の相談があつて、二十年満期二千円の養老保険の申込を受けた。
 
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手相、骨相、命の請合ひ

 『君、何だい、人の顔を見るなり変な顔をしてさ。えんぎが悪いから帰って貰はふ。』

 『いや、お暇いたしませう。ああ、それにしてもお気の毒なことです。』

 『お気の毒とは何だい。ええ、君、変なことはよしてもらはふ。』

 『いや、何も申し上げますまい。唯、一寸顔相をやっていましたのでね。』

 その儘そこを引き離れやうとすると、主人はあわてて私をとめながら、

 『何かな、さう云はれては気分が済まん。君の今云ったことをどうか聞かせて呉れ。』

 『いや申し上げません。申し上げる必要もありません。』

 『マア、そう云わずに話して呉れ、これは別問題だ。』

 『さう御主人の方で出られればお話申し上げませう。実はその御顔の黒子がどうも面白くありません。御注意なさらんと。』

 『この黒子かい。どうゆうわけです。』

 『これは左相といって横死を意味する。余程御注意なさらんといけません。何か思ひ当たることでもありませんかな。』

 主人はすっかりうなだれてしまったのである。

 『悪い事は云ひません。保険へ御加入になってその保険金で社会事業に御奉公下さい』

 遂に一萬円と云ふ高額をせしめたものです。顔相は人間の一番触れられたくない処へ触れると云ふ意味で、何時の世にも魅力がありますね。



怪我の功名

 『庄さん、僕、実は頼みがあつて来たんだよ。外でもないんだが、保険屋になつちまつて。マア、一年くらいは外交をやる約束でね。一つ心配して呉れないか、無理なことは云へないが。』

 と堅く云ひだすと、彼は一寸怪訝な顔付になつて、次のように云ひました。

 『ヘエ、坊ちゃんが保険の外交に。眞ですかそりあ。時勢も変わったもんだ、大和屋の若旦那が外交員をやらなくてはならんとは。ヨロシイ、庄公一つ引き受けせう。ご恩返しだ。然し少し待つて下さいよ。明後日お出で下さい。一緒に外交に行きませう。』

 私の胸は感謝の涙で一杯になった。これでやつと会社へも大きな顔をして行ける。

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「募集実話」、生命保険経営という学会誌の1932年より。

生保営業の本質について、80年前の事例が教えてくれること。とっても勉強になります!

こちらより入手可能
http://www.seihokeiei.jp/

1929年の論文にまでさかのぼってデータベースで検索できるとは・・・すごすぎる。こうやって知が共有されることで、業界がよい方向へ発展していくのでしょう。必死に勉強してみようと思います。

34年、変わってないこと2009年07月03日

1975年といえば僕が生まれた年(正確には76年3月)だが、34年が経過し、我々を取り巻く社会環境は大きく変化した。いや、34年というのは、ずいぶんと長い年月ですよ。

この年に出された「今後の保険事業の在り方」に関する保険審議会の答申を読んで、いかに生保業界が当時から同じ問題意識を持っていたものの、まったく変わることができずにいるかを知り、驚いた。

いまもほとんど実行されていないものを抜粋:


商品
・ 定期保険について、最低保険金額の引下げ等を含め、販売姿勢の積極化を強く期待する。

保険料
・ 保険料に関する生命保険会社間の公正な競争が促進されることが望ましい。
・ 生命保険会社は事業費枠を基礎として経営効率の向上に更に努力すべきである。

情報提供の改善
・ 会社は各保険商品の給付構成及びそれに応ずる保険料の構成を契約者に分かりやすく提示すべきである。
・ コスト比較情報について、カナダ生命保険協会の例等を参考としてその具体的な方法について早急に検討が行われることが必要である。
・ 保険約款の形式、内容両面における改善により平明化が図られることが必要である。
・ 情報提供の促進を目的として、業界協力による学識経験者を加えた第三者機関が早期に設立されることが望ましい。



昨日のエントリーで書いた1932年の募集実話集もそうですが、あぁ、この業界は本当に100年くらい変わっていないんだなぁ、ということを勉強すればするほど感じる。

難しいのは答えを指摘することではない。旧来型の生保ビジネスモデルの限界については、すでに40年前から指摘されているわけだ。チャレンジは、それをいかに実行していくか。そこには経営者の強い意志と実行力がないと、実現できないのだろう。

しかし、国民は時代にあった変革を求めている。そこに、大きな飛躍のチャンスがある。

そう、確信している。

今日発売の「週刊金融財政事情」に、寄稿記事が掲載されました。よかったら、読んでみてください。
https://store.kinzai.jp/magazine/AZ/index.html

生命保険業界における情報開示を加速化せよ2009年07月03日

本日発売の「週刊金融財政事情」(2009年7月6日号)に掲載されている文章です。金融業界のキーパーソンは読んでいる雑誌なので、結構、反響がありそうな予感。


生命保険市場を適切に機能させる
商品の情報開示を加速せよ

契約者のインフォームドパーチェスを
可能にする環境作りへの努力を

ライフネット生命保険 副社長
岩瀬 大輔


大反響呼んだ「付加保険料」開示

 二〇〇八年一一月、ライフネット生命は業界で初めて「保険の原価」を開示し、生命保険会社の情報開示のあり方に大きな波紋を投じた。提供する二商品について、保険料のうち保険金等の支払いに充てられる「純保険料」と事業費に充てられる「付加保険料」の内訳を公表したことで、それまで業界外にはブラックボックスとなっていた生命保険商品のコスト構造が明るみに出たのである。このニュースがテレビ並みの視聴率を誇る「ヤフー・ジャパン」のトップを飾ると、ライフネットのホームページにはアクセスが殺到し、閲覧数は一晩で二十四万PV(ページビュー)に上った。また、複数の新聞、雑誌、ネットメディアが開示されたデータを用いて各社商品の手数料体系を推定し、比較する記事を掲載した。
 一般に金融商品・サービスの手数料は、例えばATMの利用手数料や投資信託の信託報酬のように、金融機関を選択する際の重要な決定要素の一つと考えられており、利用者への事前開示は当然とみなされている。それではなぜ、生命保険の手数料開示が、これほど話題になったのだろうか。
 それは、生命保険が「人生で二番目に高い買い物」と言われる高額商品であるにもかかわらず、仕組みが複雑で分かりにくく、保障内容や保険料水準が適正であるかを検証するための知識も情報も手にできないまま、売り手のペースで契約が締結されていくことへの消費者の不満、不信が根底にあると考える。
 これに加えて、今回、明らかになった生保各社の手数料水準が一般の感覚と大幅に乖離していたことも、注目の大きさに寄与した。表1は、当社が開示した純保険料を基に、著名なFPが作成した比較表である。これによると代表的な年齢・保険金額の定期死亡保険について、各社で手数料水準には最大四倍もの開きがあり、高い会社は保険料の半分以上が付加保険料となる。このFPは掲載記事で「ほかの金融商品と比較して考えると、恐らく2~3割でも『高い!』と思ったのではないでしょうか」とのコメントをしているが、これが業界外から見た感覚を表しているのだろう。

保険料三〇兆円に非効率はないか

 保険募集・支払全般のあり方について議論をしてきた金融審議会「保険の基本問題に関するワーキンググループ」(保険WG)が二〇〇九年五月に取りまとめた「中間論点整理」では、今後検討が必要な論点として、①情報提供義務、②適合性原則、③募集文書、④広告規制、⑤募集主体(保険仲立人、乗合代理店)、⑥募集コスト開示、⑦募集人の資質向上、を掲げている。
 いずれも本質的に重要な課題であるが、これらを眺めていると、その底流にあるのは消費者が保険会社とフェアに渡り合えるだけの知識と情報を与えられていないため、自分に適した商品選択をおこなえていないという現状である。金融のプロである読者諸氏の間ですら、加入している生命保険の内容を十分に理解しないまま、高い保険料を払い続けているという方は決して少なくないのではないか。
 仕組みや内容を十分に理解しないまま加入していることの問題点は二つある。まず、いざ保険事故が起こったときに自分が期待する給付を受けられない恐れである。保険募集における理解不足という保険の「入口」の問題は、「不適切な不払いや支払い漏れ」という「出口」の問題に繋がる。
 もうひとつは、十分な理解と情報があったなら選ばなかっただろう保険商品に加入していることの社会経済的な損失である。生命保険業界が年間保険料収入三十兆円を超える規模であることを考えると、適正な商品選択を行えていない結果、過大な保険料を払い、業界の非効率が温存されていることは、消費者余剰の拡大と社会的厚生という観点からは、深刻な問題である。

世界一儲かる日本市場

 あまり知られていないが、日本の生命保険料は国際的に見ても極めて高い水準で高止まりしている。インターネット経由で入手可能な範囲で日米英の定期保険の保険料水準を比較してみたところ、三〇歳の男性が三千万円相当の保障を十年確保するための保険料は、最も有利な優良体について日本では三六〇万円、米国では七六万円と、最大五倍近い格差があった(表2)。
 また、世界中で活動するある保険会社の地域別収益率データによると、新契約の利益率は米英の一~二%に対して、わが国は約九%である(表3)。商品性の違いを考慮するとしても、日本が先進国でもっとも儲かる生保市場であることは疑いない。そして、この高い保険料の代償は誰が払っているのかというと、より健全な市場であれば競争による価格低下の利益を享受できたはずである、一人ひとりの保険契約者なのである。
 一九九六年に施行された改正保険業法は、規制緩和と競争促進を目的としていた。一二年が経過したが、政府が一連の規制緩和策の経済効果について分析した「規制改革の経済効果(2007年版)」によれば、損害保険業界では三千億円を超える利用者メリットの拡大が、事業費の効率化と保険料引き下げ等の形で実現されたと推定されている。これに対して、同レポートでは言及されていない生命保険業界について筆者が同様の分析を行ったところ、利用者メリットが拡大している様子は見られなかった。
 具体的には、規制緩和後の一〇年間で、生命保険の「価格」たる新契約一件当たりの平均保険料は、まったく下がっていない。また、保有契約一件当たりの事業費に至っては一〇年どころか、二〇年前から効率化されていないのである。
 ここ十数年の間、専属チャネルの縮小、外資系生保や損保系生保のシェア拡大、死亡保障から医療保障へのシフトなど、業界内部では慌ただしい変化が見られた。しかし、消費者の立場から見ると、事業費の効率化と保険料の低下といった規制緩和による経済的な恩恵は、未だ受けていないのである。

売り手と買い手の情報格差
 
 当局は〇六年に付加保険料を弾力化し、多くの新規免許を付与するなど、競争促進的な政策に舵を切った。しかし、多くの国民がその果実を享受するには、彼らが生命保険の仕組みを理解し、複数の商品から自分にもっとも適した商品を選べることが前提となる。
 生命保険は無形であり、給付が加入のずっと後に不確定的に生じるというその性質上、売り手と買い手との間に大きな情報格差が内在する商品である。売り手たる保険会社の自主的な情報開示に委ねたのでは、買い手たる消費者が対等な立場で向かい合うことは難しい。その非対称性を解消し、消費者が合理的な知識と情報をもった購入を行うためには、個別の保険商品に関する情報開示を義務づけることが不可欠である。
 生命保険業界の情報開示は、財務状況については、充実してきた。九八年にソルベンシーマージンの開示が義務付けられたのち、自主的ではあるが三利源の開示、企業価値を表すエンベデッド・バリュー(EV)の開示なども少しずつ一般化しつつある。
 これに対して、商品に関する情報開示はまだはじまったばかりである。金融庁は〇五年以降、「保険商品の販売勧誘のあり方に関する検討チーム」によって一年半にわたって検討された保険の販売勧誘に関する改善策の提言を受け、保険契約時の「契約概要」及び「注意喚起情報」の契約者への交付に加え、保険契約時に「意向確認書面」の交付、比較情報提供のための環境整備などを実施してきた。

情報開示強化への四つの提案

 これらの措置は契約者の理解を高めるためには望ましい一歩であるものの、まだ十分とは言えない。具体的な情報開示規制として、四つの提言を行いたい。
 まず、契約者の基本的な知識と理解を高めるため、米国の「バイヤーズ・ガイド」(購入の手引き)に相当する冊子(例えば、生命保険文化センター「ほけんのキホン」等)の事前交付を原則として義務付けるべきである。内容としては公的保険と民間の保険のすみわけや貯蓄と保険の使い分け方、保険料と保障範囲のトレードオフ、複数の保険会社から自分に合った商品の選び方のポイントなど、複数の商品比較を前提とした記述が望ましい。なお、一冊百円程度のコストは、新契約獲得単価が十万円を超えることが珍しくない現状に鑑みれば、大きな障害とはならないと考える。
 次に、保険会社が取り扱うすべての商品について約款をホームページ等で入手可能な状態にすべきである。保険会社と加入者との契約内容である約款こそが商品そのものなのであるから、従来の業界慣行のように、契約者しか約款の交付を受けられないということは、加入前の商品内容の十分な理解を前提とする立場からは論理矛盾がある。
 加えて、すべての商品について保険料表を(主契約と特約毎に)事前に閲覧可能な状態にすべきである。保険商品を選ぶに際してもっとも重要な要素が、払い込む保険料とその対価として受けられる給付のトレードオフである。したがって、保険料率に関する情報は、保障内容を定める約款の開示と対をなすものと考えられるべきである。約款と保険料表の全面開示は当局も発展を望んでいる健全な比較情報の流通を実現するためにも不可欠である。現在でも比較サイトは存在するが、これは代理店契約を結んだ保険会社からしか情報を得られないため、極めて限定的なものとなっている。
 最後に、これらの情報をより使いやすくするために、すでに契約時の交付が義務付けられている「契約概要」のなかに、一定の共通条件を設定した上で、主契約部分の「コスト指数」の記載を求めるべきである。詳細の比較は契約者の自主努力に任せるとして、各社の商品がおおむねどのような価格水準にあるかを簡単にとらえることを求めるべきである。米国では、四〇年以上前から起こったコスト開示の議論の結果、このような指数の記載が標準化しているが、我が国に「契約概要」などが輸入される過程で、どういうわけか消えてしまっていた。
 この点と関連して、各社が自主的に付加保険料の開示を行うことが、商品に関する理解を深め、加入の適切な意思決定を行うためには望ましいと考える。保険WGも「中間論点整理」において、募集コスト開示については「消費者が多様な保険商品の中から商品の選択を検討するに当たって、付加保険料の水準や代理店が保険会社から受け取る手数料の水準は有用な情報であるので、これらの情報の開示を検討すべきとの意見があった」と指摘したうえで、「今後、これらの意見について、消費者に対してどういった情報を提供していくことが有効か、また保険会社のディスクロージャーのあり方をどう考えるか等の観点から・・・検討していくことが必要と考えられる。」とまとめている。
 「保険商品は安さだけではない」という指摘は正しい。保険料を安くする代わりに通信販売のようなセルフサービスでもよいという消費者もいれば、保険料が高くてもよいからプライベートバンキングのように手厚いサービスを受けたいという顧客もいるだろう。重要なのは、そのサービスのためにいくら保険料が上乗せされているのか、情報を与えられた上で選ぶというインフォームド・パーチェスを可能にする環境を作ることではないだろうか。

情報格差の解消こそ

 保険会社の破たんを未然に防ぐことや、不適切な不払いが起こらないよう確保することは、契約者からしてみると当たり前のことに過ぎない。生命保険という商品の特殊性を考慮すると、真の契約者保護とは、保険会社と一般契約者との間に存在する圧倒的な情報格差を解消し、契約者が判断を行うに必要な知識と情報を手にした上で、自らにとって「ベスト・ディール」(最良の取引)を見つけることができる環境を整えることである。歴史的に、保険会社の利益の源泉はこのような情報格差、「消費者の無知」にあったと考えられるし以上、自主的な開示は期待できないと考えるべきである。
 先に見たように、年間三十兆円の市場が効率化することの国民経済的な意味は大きい。一割の価格低下が実現できれば、三兆円が消費者の手に返されることになる。しかし、そのためには市場を適切に機能させるための修正が不可欠である。今後は、生命保険会社の保険商品に関する情報開示が推進することを期待したい。

(本稿の見解はすべて筆者個人のものであり、筆者が属する組織のものではない)

計画された偶然性2009年07月06日

週末はグロービス主催の「あすか会議2009」なるカンファレンスにてパネリストとして参加するため、山梨に行ってきました。

行ってみたら、チームラボ猪子さん、芸者東京田中さん、元カーライル朝倉さん、岡島さん、スマイルズ遠山さん他、知ってる人がたくさんいて、いろいろお話できて楽しかった。

パネルディスカッションはキャリアに関するもので、テーマが「計画された偶然性」。いわゆる、プランド・ハップンスタンス理論について。

パネリストは札幌に恋をして突然家を建ててしまい、三井物産を辞めてベリサインなどいくつかの企業の社長を務められている川島さんと、キッズベースキャンプの鈴木さん(同社の社長の島根さんとはつい先日別のパネルで御一緒したばかり)。

とても嬉しかったのが、グロービスの林恭子さんがモデレータを務められたこと。林さんは僕が学生のときにBCGの人事をやられていて、法曹の道を選ばずに同社に入社するきっかけを作ってくれた一人なのです。
http://gms.globis.co.jp/teacher/eoh_hayashi_kyoko.html

三つ子の魂とはよくいったもので、自分が大学生の頃に採用をやっていた人というのは、本当にいくつになっても頭があがらない・・・

「うぅ、岩瀬君が立派になってくれて、乳母役の林は嬉しいよ・・・」

と優しい言葉をかけてくれたが、はじめて会った12年前、まさかこのような形で山梨の山奥で一緒にパネルディスカッションをやっているなんて、夢にも思わなかった。

さて、皆さんのお話や、先日の遠山さんの話などを聞いていても、皆さん、ばっちりキャリアプランを立てていたわけではなく、小さな偶然の積み重ねで、今の自分にたどり着いたのだなぁ、ということを痛感した。

僕の場合、
・ たまたま高校の選択科目で取った「音楽」の先生が学生時代にジャズ小僧だったことからジャズと出会い
・ たまたま入った代々木NARUというジャズバーで仲良くなったボーカリストのお姉さんに「あなたはコクサイベンゴシを目指しなさい」と言われその気になり
・ 3年生のときに司法試験の最終で落ちて宙ぶらりんになったので、たまたま封筒が手書きだったから開封してみたBCGのインターンに参加し
・ BCGでたまたま席が近かった先輩に誘われて一緒に辞めてベンチャーに移り
・ たまたまベンチャーが失敗して、店じまいをすることになり、同じビルに入っていたヘッドハンティング会社のお兄さんに声をかけられてリップルウッドへ移り
・ たまたま?破局しかかった太平洋越しの遠距離恋愛を修復すべく、渡米してMBAに行くことになり
・ たまたま書き始めたブログが呼び水となり谷家さんと出会い
・ たまたま谷家さんがある方から伊佐さんを紹介してもらい、伊佐さんが谷家さんに出口を紹介したことからライフネット生命が生まれることになった
(伊佐さん→ http://www.lifenet-seimei.co.jp/newsrelease/2009/1810.html

まぁ、とにかく「たまたま」の連続なわけですよ。

結局、今の小さな自分のチープな想像力で考えられる10年後の自分の姿なんて、本当にちっぽけなものなのだから、

いつも10年後は今の自分が想像すらできないワイルドなことをやっていられたらいいなぁと思っています。ライフネットベトナム立ち上げとか。それも想像できてる範囲で、大したことないんだろうなぁ。

七夕祭り2009年07月07日

人から影響を受けやすいのが私の短所でもあり、長所でもある。

最近、立て続けに「写真がきれいなブログ」を書いている人に会って、触発された。

スマイルズ 遠山さん http://toyama.smiles.co.jp/
HBS留学中 矢野さん http://rieglobe.exblog.jp/

特に遠山さんは小さなデジカメでお洒落な写真をいっぱい撮られていたので、「カメラ何使ってるんですか?」と聞いてしまった。

リコーのR8だそうです。欲しくなったので、買おうっと。

保険会社の仕事というのは基本的にデスクワークで、あまりフォトジェニックな仕事ではないのですが、新しいデジカメを入手したら、ちょっと元祖・ハーバード留学記を思い出しながら、写真があるブログに再び挑戦したいと思っています。

宴のあと2009年07月08日

とある大手買収ファンドのオフィスにお邪魔して、そこで働く若手の皆さんとランチをご一緒した。ここは社内にシェフが常駐していることで有名。いや、大企業の食堂なら分かるのですが、数10人の小さな組織なのに、シェフがいるのですよ。

留学中、この会社のニューヨークオフィスに面接しにいったことがある。資料を大量に渡されてPCの前に座らされ、「4時間で資料を読み込み、エクセルで収支計算をして、投資メモを書け」という課題を課せられた。

ちょうどお昼どきだったので、「何か食べる?」と聞かれた。「何がありますか」と聞いたところ、「いや、何でもできるけど。シェフいるから」と言われてびっくりしたのを覚えてる。無難にクラブサンドイッチとかにした覚えがあるが、いま覚えば、「かつ丼」とか「ぶりの照り焼き」とか、無茶ぶりしてみればよかった。あまり感じ悪いと面接落とされるか。

さて、この会社の東京オフィスは、まだ投資をやっておらず、静かに投資機会をうかがっているのだが、久しぶりに投資ファンドの人たちと話をして、留学と金融危機を経て考えが変わったことを思い出した。

もちろん、わが国に投資ファンドのようなリスクマネーの供給は必要だし、優れた経営者が企業経営を建て直すことで価値が生まれることは間違いない。その意味で、PE (プライベートエクイティ)業界は、まだまで大きく成長する余地はある。

しかし、大事なのは、当たり前なのだが、「簡単にお金が儲かるうまい話はない」ということである。振り返ってみると、過去10年強、ファンド業界で生み出された価値の多くは、信用バブルによる高レバレッジや、株式市場自体の上昇によるものであり、ファンドの自助的な努力が価値に繋がるまでには、相応の労力と時間が必要と考えなのであり、すぐに結果が出るものではない。

そもそも会社というのは、そう簡単に変わるものではない。人員削減やコストカットは一時的にはできるかもしれないが、持続的な企業の競争力の源泉にはならない。そのためには、結局時間をじっくりかけて人材を育成し、動機付け、永続的に新しい商品・サービスを生み出すような組織を作っていかなければならない。

また、そこで価値が生まれたとしても、多分かつての年率30%とか40%という驚異的なリターンではなく、5~10%の安定的なレンジに過ぎないところに収斂してくはずである。

業界で働く人たちも、仮に買収案件で大きく成功したとしても、受け取るべき報酬水準は何千万円とか何億円とかではなく、普通の給与水準におまけがついた程度のものでいいのではないか。本当に対象企業の価値を高めるためには、現場でどれだけ汗を流していることが本質的に重要で、いくら深夜遅くまでPCの前で資料作りに専念していたとしても、企業の実体的なバリューアップには大きく貢献していないことに気がつかなければならない。

更に(米国についていえば)、政策的に、そこで生まれた富の配分を公平のするための能動的な努力が欠かせない。過去10年か20年で、米国のCEOの平均報酬は数10倍になり、一般労働者のそれは下がっているという。どんなに立派な仕事をしたとしても、一人の人間が数億、数十億の金銭を手に触れるほどの社会的な価値があるのだろうか。私は(バフェットのような一部のスーパースターを除いて)否だと思う。

今後は投資ファンドも、もう少し「ふつーのビジネス」となるのではないか。ふつーの会社員として一所懸命働いて、ふつーより少し魅力的な給与をもらってもいいけど、これまでのようなファンドバブルは、もう来ないんだろうな。

ソーシャル・マーケティング2009年07月09日

国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の東京事務所を開設し、ディレクターを務める土井香苗氏が来社。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%9F%E4%BA%95%E9%A6%99%E8%8B%97
http://www.hrw.org/sites/default/files/related_material/Kanae_article.pdf

土井さんは大学1年からの知り合いだが、3年生のときに二人で司法試験の最終発表を見に行ったことが忘れられない。

土井:「あぁー、どうしよう、ワタシ絶対落ちてるよ」

岩瀬:「まぁ、来年があるから、あまり落ち込むなよ(自信満々)」

(そして霞ヶ関の人事院にて発表)

土井:「あったー!!!!うかってるぅ~~信じらんない~~♪」

岩瀬:「・・・ない。。。。」

それ以来、「この人にはかなわない」という悔しい思いを何度もさせられているのだが、自分にはできないことを代わりにやってくれてる、という想いで応援をしている。

HRW はほとんどが弁護士という超エリートNGO。国連や各国首脳へ独自のパイプを持ち、卓越した調査能力と提言能力で知られている。

日本は外交舞台でもそれなりの影響力を持つにもかかわらず、いままで十分な国際的な人権活動という面では必ずしも十分な役割を果たせておらず、HRW も日本には事務所がなかった。土井さんは初の日本人ディレクターとなる。

ぜひ、皆さんも応援してあげてください!
http://www.hrw.org/ja/home

活動に共鳴したら、よかったら寄付してあげてください。

ヘルスケア×保険2009年07月10日

金曜夜は、フィットネスクラブのルネサンスで執行役員ヘルスケア推進部長を務める高崎尚樹氏が主宰する「健康アライアンス.jp」という勉強会にて講演。

終了後、雑誌「医療経営」からご担当者がいらしていて、刷り上がったばかりの掲載誌を頂く。

 「ワイド特集 ~ 
 次代を担う俊英50人の大胆提言
 自分たちの見据える
 日本の医療の行く先はここだ!」
 http://www.jmp.co.jp/keiei/phase3/bn/ph0908.html

最後から2番、49人目のちょい役で出させて頂き、「4.6兆円の民間医療保険市場が効率的に運営されるために、もっと情報開示が必要」といった内容が掲載された。

いつもは馴染みがない「医療」という場面での登場だったのだが、雑誌を開いてびっくりしたのは、友人・知人がたくさん出ていたこと。気付かないうちに、医療関係者にもネットワークが広がってたのね。

トップバッターは、HBSで1学年下だった医者の山本ゆーじ。HBS初の日本人医師として、今は病院経営の専門家への道を歩み、活躍しているらしい。最近あってないな。
http://hsr.hitomedia.jp/interview/2007/12/post_2.html

次にパラパラめくってみつけたのは、ルネサンスの高崎さん。健康増進による予防医療は医療費を抑えるためにも非常に重要なテーマで、地方自治体などと協力して様々なプログラムを展開しているとのこと。

日本調剤の三津原庸介さんは日本有数の保険薬局調剤チェーンの二代目。友人の紹介で、2年前にランチしたっけ。

林英恵ちゃんはボストンで一緒だったのだが、外資系広告代理店のマッキャンエリソンにヘルスケア専門のコミュニケーションをやるために入社し、いまはハーバードの公衆衛生大学院に留学中。
http://ameblo.jp/hanairo/

そして、「さすがにもう知り合いはいないだろう」と思っていたところ、貫禄あるさわやかな風貌で我らが小野崎耕平氏が登場。留学時代の大親友で、いまは日本医療政策機構の医療担当ディレクターを務める。こちらの事務局を務めており、今回取材を受けるひとつのきっかけを作ってくれた。
http://www.healthpolicy-institute.org/ja/kokuminforum/

民間保険は社会保障の一環を担うものであり、国の医療政策の在り方とは無縁でないはず。本来であれば、民間医療保険も(米国のように)全体の医療システムの中に組み込まれ、請求から給付のプロセスや、料率策定などに公的な関与があってもいいはずだが、いまは「定額給付」という形をとっており実質的な医療行為の内容に立ちいることはほとんどなく、医療関係者からもほとんど注目されていない。

今後、増大する医療費の財源として医療保険は重要な役割を果たす。患者の自己負担は約5兆円。民間医療保険の保険料収入は4.6兆円。年間の給付額はいまのところ1兆円弱に過ぎない。民間医療保険の適正な運営がなされることは、国民経済的にも重要な意味を持つ。

よい週末をお過ごしください!

変えること、託すこと2009年07月13日

日曜は夕方に子供の手を引いて選挙へ。用紙を投票箱に入れるところだけ、やらせてあげた。自分たちが投じた一票をきっかけとして、何かが変わろうとするのを目の当たりにすると、民主主義のダイナミズムを肌で感じる。

政権交代しても人材不足とかいう懸念もあるようだが、100点ではなくても、とにかく一度は変わる、変える、ということは非常に大切だと思う。ライフネット生命のオフィスがある千代田区では、26歳のIT系企業社員が、現職の自民党の大ベテランに勝利。

30代前半の市長があちこちで生まれていることも、本当に素晴らしい。他の地域では一応、地方議会議員の経験者だったようですが、奈良市長に当選したのは議員経験なしの33才。

日曜の夜、テレビで選挙結果の速報を見ながら、パソコンで英国保守党党首 デイビッド・キャメロンの演説をYoutubeで見ていた。42才の彼は彼も党首に就任したときは39才だったのですね。これはすごい。野党になった自民党党首に、39歳が選ばれるようなものなので。

彼も(オバマ同様)、たった一つの演説がきっかけとなって、一気に党首までのぼりつめた。心を揺さぶる言説によってリーダーが選らばれること、そして若い人にもリーダーの地位を託してみようと決意し、ベテラン勢が温かく支えること、そういうことがわが国でもどんどん進んで欲しいし、地方レベルではあるが、少しずつ起こりつつあることは、望ましいことだと思う。この流れが止まりませんように!