ダボス会議体験記(3)2011年01月26日

2011年1月25日、午前8時、ヒートテックを上下着こみ、ホッカイロを腿と背中に貼り、万全の防寒対策を施した上、今回のために買った柔らかい素材の長くつを履きこみ、ビジネスシューズを袋に入れて、アパートを仲間と出発した。

ダボスの本会議は翌26日から開始するのだが、我々若手グループは前日に入って、一日慣らし運転のプログラムが用意されている。雪の中をザクザク歩いていると、ちょうどいいタイミングで市内バスが来たので乗り込んで、5分ほどして会議場に到着した。

最初に受け付けに行き、パスポートを提示し、会議参加のバッジをもらって首からぶら下げる。会議期間中はこのバッジがあればあらゆるところにアクセスできるが、なければどこも入れてもらえない。必須アイテムだ。受付に来ると各地から集まったYGLの仲間がいて、知っている顔と挨拶をかわす。

すぐ近くにあるホテルの会場にミニバスで移動し、空港さながらのセキュリティを通過してから、クロークにコートと長靴を預ける。階段を降りていくと既に大勢の仲間がコーヒーを飲みながら談笑している。

たまたまミニバスで一緒になったアメリカ人の女性と話を始めていた。「コンニチハ、ナンシートイイマス」と日本語で声をかけてくれる。聞くと、大学生の頃に徳島にホームステイをしていたという。今年の7月頃に京都と東京に行くというので聞いてみると、僕も参加する予定の米日財団が主催する「日米リーダーシッププログラム」に参加するとのこと。これは日米から10名ずつ選び、シアトル、京都と2年越しで1週間ずつ研修するプログラムである。奇遇だね、と二人で喜ぶ。

「私はTED(米国西海岸のカンファレンス)や様々なカンファレンスに出ているけど、YGLのメンバーが一番多様で刺激的よ」とのこと。

会議場に移動すると、YGLの事務局長を務めるDavidから開会の挨拶。

「君たちYGLは、次世代を引っ張っていく存在だ。僕らのプログラムを通じて一人ひとりが1%でも成長してくれれば、世界は必ず変る。そう思って、今日も一日、充実したプログラムを詰め込んだので、楽しんで欲しい」

そして、5年間の任期を終えた二人のYGLの体験談を紹介した。このコミュニティに参加して、若い頃持っていた理想主義を思い出した。CEOになってからは自分に色々とものをいってくれる人が少なくなった、ここではそういう生涯の友人を作ることができた。

朝のセッションは、YGL9人が5分ずつ、「New Reality」ということで、変わりゆく世界を様々な観点から問題提起のプレゼンテーションをした

興味深かったのは、ネット業界の有名人、グーグルの Marissa Meyer。

「今の膨大な量のデータを解析することで、様々なことが分かる。例えば、クレジットカードの履歴を分析することで『2年後に離婚する確率が高い人』までかなりの精度で予想できるようになった(笑)。検索ワードから伝染病の普及は予想できるようになったし、『住宅ローン』『職探し』などのキーワードと失業率の相関関係をかなり性格に出せるようになった。これらを使うことで、世界の諸課題に様々な形で対処できる」

また、スペイン人で National Geographic に務める Enric Sala は、かつて人口が2万人から100人まで減少して絶滅したイースター島の例をあげながら、現状のペースで漁業を続けたら魚が枯渇してしまうことを指摘して、希少な海洋資源の持続可能な利用を提言した。

インドのビジネススクールで教授職にある Rueben Abraham は
これから数10年にかけてのもっとも大きなトレンドとして "Urbanization"、都市への人口集中をあげた。中国、インド、アフリカなどの経済が発展することで、農村から都市への大量の人口流入が起きる。1900年には世界人口の14%が都市に居住していたに過ぎないが、2000年には50%になり、2050年には80%にまで上がる。「1分当たり、32の農村が大都市に流入している計算になる」。これによってエネルギーなどのインフラ、教育など、多岐にわたって社会構造を変えていかなければならない。

このような形で、市民の消費量と資源枯渇をどのように切り離すか、政府とビジネスと国民の役割分担どのように考えるべきか、国家から地域への権力移管、資本主義のありようなど、様々なテーマについて問題提起がなされた。

ちょっと疲れたのでこのあたりで一休み。