政府の専門調査会、体験記 ― 2010年10月21日
火曜日に参加した、IT戦略本部の規制緩和専門調査会に関するご報告。
メンバーは、30代~40代の方が多く、この手の会議としてはとても若いそうだ(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kaikaku/kousei.html)。
この調査会に与えられたタスクは、「情報通信技術の利活用を阻むような規制・制度・慣行、サービスの仕組みそのものの在り方や運用等の洗い出しを行い、国民にとって利益となる形で抜本的に見直すために必要な調査を行う」こと。
具体的には、事務局の方で選んだ46項目の規制をベースに、詳しく議論をする対象を絞り込んで行こうということだった。
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kaikaku/dai1/siryou7.pdf)
スケジュール案を見て気がついたのは、11月中に「Aランク」項目については一通りの議論を終えようとういこと。
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kaikaku/dai1/siryou6.pdf)
ということは、ほとんど時間がない。会合は開催できてもせいぜい2-3回。かつ、ひとつの案件に1時間使ったとしても、4-5個しかできない。したがって、すぐにでも「Aランク」に絞り込むことが必要だと考えた。
そして、この手の審議会の過去の議論の経緯などを見ると、絞り込みのプロセスが明確でなく、各委員が気になってコメントした項目がそのまま残っていることが多い。でも、これではたまたま各委員が関心があったり詳しい項目が優先的に取り扱われることになり、よくない。
例えば、今回でいえば「42番 保険契約の解約返戻金がないことを記載した書面の電磁的交付」というものがある。ライフネットはこれに該当するため、ネット完結ができず、お客様から書面にサインして返送頂いている。オペレーション効率化の観点から言えば、この規制を緩和してもらえたらありがたいことこの上ない。
しかし、私はライフネット生命、ないしネット生保の利益代表としてこの専門調査会に参加しているつもりはない。あくまで国民の代表として参加しているのである。上記の規制は撤廃すべきと考えるが、それによって恩恵を被る人の数はまだ限られているし、それは金融庁と直接折衝すればいいことである。このような省庁横断的な場における貴重な時間を使って、自社や自分の産業の利益だけを主張するべきではない。
したがって、今回は以下のことを提案しようと考えた。
① 時間的制約を考えると、「Aランク」とするのは3-5個に絞るべき
② 絞り込みの基準については、透明性、納得性の観点から、どのような基準とプロセスで選ぶかを事前に合意すべき
③ 時間がないから、仮説ベースでどんどん進めるべき
上記に従って、以下のような資料を提出した
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kaikaku/dai1/siryou8.pdf
そして発言のタイミングで、上記の①と②について合意しませんか、と提案した。基準はたたき台なので、これじゃなくてもいい。しかし、ルールがないまま前に進むのでは、後だしじゃんけんのようになってしまう。
しかし、である。
座長の野原佐和子氏は私の提案にあまり時間はさかず、「座長の判断として、各自委員の意見を聞く形で進めます」と述べた上で、漫然と各委員に意見を求め始めた。
これではせっかくの提案が生かされないので、何度となく上記の意見を述べた。なかには、「おおむね岩瀬委員の意見に賛成、しかし修正を施すべき」といったように同調する意見も頂いたのだが、概して会議はとくに結論めいたものがないまま終わり、「また次回も集まって皆でお話しましょうね」という雰囲気で終わった。
事務局から事前に渡されている議事進行通りにやらないといけないのだろうか。何となくアドホックに各自から意見を聞けばいい、と考えてらっしゃるのだろうか。
しかし、そもそも調査会のミッションが絞り込みを行うことであり、かつ時間が限られているのであればなおさら、議長の仕事は、会議で何が決まったかを整理し、確認し、次回までの宿題を確認することではないか。
間に担当する政治家の方々(内閣府、経産省、総務省の政務官)からのお話などもあり、2時間はあっという間に終わってしまったが、結論もない会議に、フラストレーションがたまった。
終わってから、他の委員と立ち話をした。同じ意見を持ってくれた方が何名かいた。別途、朝食かお昼でも食べながら意見交換しましょう、ということになった。
あまり多くを期待しすぎてはいけないのだろうか。いや、そんなことはない。あまりうるさく言うと、もう呼ばれなくなってしまうのかもしれない。しかし、自分は別に政府の御用委員になりたいわけではない。正しいことを主張する機会を与えたのだから、その任務は果たしたいと考えているだけだ。
火曜の会議の議事録がアップされるまではもう少し時間がかかるのでしょうが、まずは第一報まで。
メンバーは、30代~40代の方が多く、この手の会議としてはとても若いそうだ(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kaikaku/kousei.html)。
この調査会に与えられたタスクは、「情報通信技術の利活用を阻むような規制・制度・慣行、サービスの仕組みそのものの在り方や運用等の洗い出しを行い、国民にとって利益となる形で抜本的に見直すために必要な調査を行う」こと。
具体的には、事務局の方で選んだ46項目の規制をベースに、詳しく議論をする対象を絞り込んで行こうということだった。
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kaikaku/dai1/siryou7.pdf)
スケジュール案を見て気がついたのは、11月中に「Aランク」項目については一通りの議論を終えようとういこと。
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kaikaku/dai1/siryou6.pdf)
ということは、ほとんど時間がない。会合は開催できてもせいぜい2-3回。かつ、ひとつの案件に1時間使ったとしても、4-5個しかできない。したがって、すぐにでも「Aランク」に絞り込むことが必要だと考えた。
そして、この手の審議会の過去の議論の経緯などを見ると、絞り込みのプロセスが明確でなく、各委員が気になってコメントした項目がそのまま残っていることが多い。でも、これではたまたま各委員が関心があったり詳しい項目が優先的に取り扱われることになり、よくない。
例えば、今回でいえば「42番 保険契約の解約返戻金がないことを記載した書面の電磁的交付」というものがある。ライフネットはこれに該当するため、ネット完結ができず、お客様から書面にサインして返送頂いている。オペレーション効率化の観点から言えば、この規制を緩和してもらえたらありがたいことこの上ない。
しかし、私はライフネット生命、ないしネット生保の利益代表としてこの専門調査会に参加しているつもりはない。あくまで国民の代表として参加しているのである。上記の規制は撤廃すべきと考えるが、それによって恩恵を被る人の数はまだ限られているし、それは金融庁と直接折衝すればいいことである。このような省庁横断的な場における貴重な時間を使って、自社や自分の産業の利益だけを主張するべきではない。
したがって、今回は以下のことを提案しようと考えた。
① 時間的制約を考えると、「Aランク」とするのは3-5個に絞るべき
② 絞り込みの基準については、透明性、納得性の観点から、どのような基準とプロセスで選ぶかを事前に合意すべき
③ 時間がないから、仮説ベースでどんどん進めるべき
上記に従って、以下のような資料を提出した
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kaikaku/dai1/siryou8.pdf
そして発言のタイミングで、上記の①と②について合意しませんか、と提案した。基準はたたき台なので、これじゃなくてもいい。しかし、ルールがないまま前に進むのでは、後だしじゃんけんのようになってしまう。
しかし、である。
座長の野原佐和子氏は私の提案にあまり時間はさかず、「座長の判断として、各自委員の意見を聞く形で進めます」と述べた上で、漫然と各委員に意見を求め始めた。
これではせっかくの提案が生かされないので、何度となく上記の意見を述べた。なかには、「おおむね岩瀬委員の意見に賛成、しかし修正を施すべき」といったように同調する意見も頂いたのだが、概して会議はとくに結論めいたものがないまま終わり、「また次回も集まって皆でお話しましょうね」という雰囲気で終わった。
事務局から事前に渡されている議事進行通りにやらないといけないのだろうか。何となくアドホックに各自から意見を聞けばいい、と考えてらっしゃるのだろうか。
しかし、そもそも調査会のミッションが絞り込みを行うことであり、かつ時間が限られているのであればなおさら、議長の仕事は、会議で何が決まったかを整理し、確認し、次回までの宿題を確認することではないか。
間に担当する政治家の方々(内閣府、経産省、総務省の政務官)からのお話などもあり、2時間はあっという間に終わってしまったが、結論もない会議に、フラストレーションがたまった。
終わってから、他の委員と立ち話をした。同じ意見を持ってくれた方が何名かいた。別途、朝食かお昼でも食べながら意見交換しましょう、ということになった。
あまり多くを期待しすぎてはいけないのだろうか。いや、そんなことはない。あまりうるさく言うと、もう呼ばれなくなってしまうのかもしれない。しかし、自分は別に政府の御用委員になりたいわけではない。正しいことを主張する機会を与えたのだから、その任務は果たしたいと考えているだけだ。
火曜の会議の議事録がアップされるまではもう少し時間がかかるのでしょうが、まずは第一報まで。
コメント
_ 鈴木英介 ― 2010年10月22日 14:28
_ konozaki ― 2010年10月25日 21:33
素晴らしい!
_ shufu ― 2010年12月02日 16:08
岩瀬さんの資料はわかりやすいですね。
何故かわかりませんが。
文字ばかりだと頭が混乱しました。。
何故かわかりませんが。
文字ばかりだと頭が混乱しました。。
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しかしながら良く言われる事ですが、この手の調査会はガス抜きが目的なので、具体的な説得力のある提言が出てきては困るのです。
座長と役所の間ではそのあたりの話はできていて、ともかく名のある人たちから「幅広く御意見を頂戴した形」にしておくことこそが会議の目的です。
そうした役所の仕事の手法(プロトコル)自体を少しでも変えられるように、ぜひガツガツとぶつかっていってください。