一人一票の地方格差2010年08月26日

一人一票の格差を容認する理由として、「少数者である地方の意見を反映させるために、地方の票に重みを持たせるべきではないか」という意見をよく見聞きする。

しかし、一票の格差問題は必ずしも「地方対都市部」に限らず、地方間でもある程度の差がある。

また、それ以上に興味深いのは、歴史的に裁判所が一票の格差を容認してきた理由が、このような「地方保護」という観点ではなかったことである。

日経新聞編集委員である三宅伸吾氏の名著「市場と法」(日経BP)によると、戦後の冷戦時代においては、まだ「資本主義対社会主義」というイデオロギーの戦いが残っており、都市部のインテリ層を中心に反体制的な動きが行われる可能性があったことが、地方票に重みを持たせることを是認した理由であるという。

「60年安保まで、インテリには社会主義が選択肢として残っていた。(格差訴訟で)体制を変える判決を政治家でもない最高裁判事は書けないだろう」

「(元外務省条約局長だった)福田(博)は05年に退官するまで格差訴訟で違憲判断を書き続けた。

冷戦時代の合憲判断について福田は『本音で判決を書けば、都市部の人は煽動に乗りやすく、体制選択の可能性が出てくるので、田舎の人を優遇しようということだった』と話す。こうした理由はもちろん最高裁判決には書かれていないが、福田はある判決のなかで、さらりと述べている。

『冷戦たけなわの時代にあっては、司法が定数訴訟において『広範な裁量権』の論理を用いることにより立法府に寛容な態度を示し続けることに対し、我が国の地政学的位置等から、内外の安定の重要性を第一に考え、公職選挙法の根本的改正につながるような事態を避けようとする考えに合致するとして黙認する風潮があったのかもしれない』。

退官した福田は『体制を守るための方便は緊急避難としてはあり得るだろうが、冷戦は終わり、体制選択の可能性は極めて低い。最高裁は国会に対するチェック機能をしっかり果たすべきではないか』と話す。」

少数者としての地方の利益を確保するための方策はもちろん必要ですが、それは票の重みを是正する形でやるべきではないと考えています。

「皆さんは、戦後の裁判所をご覧になって、『違憲立法審査権をもっと行使すべきだ』とおっしゃるけれども、今まで二流の官庁だったものが、急速にそんな権限をもらっても、できやしないです」。しかし、「これからは『闘う司法』でなければ駄目です。それが今後の司法だと思う」 (矢口元最高裁長官)。

ご存知ない方も多いかなと思い、ご紹介してみました。今日は17時から、伊藤真弁護士と一人一票運動について ustream 対談します。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/1063