日本で最も人材を育成する会社2010年01月13日

酒井穣さんは留学中のブログ仲間。

当時からセンスいい文章を書く人だなぁと思っていたので、「はじめての課長の教科書」がベストセラーとなり、ベンチャー経営にかかわりながらもビジネス書作家として活躍している姿を見ると、自分の「目利き」が実証されたようでとても嬉しくなる。

昨日、新著「日本で最も人材を育成する会社」を送って頂いた。主題は「人材育成」なのだが、私はいくつかの異なる観点から興味深く読んだ。

http://www.amazon.co.jp/dp/4334035426

【名言集として】
梅田望夫氏の「ウェブ時代 5つの定理」はシリコンバレーの雄たちの心に残る言葉を集めた名言集だが、本書もそういう楽しみ方ができる。

いくつか自分の心に残った言葉をピックアップすると:

「私は人間を弱者と強者、成功者と失敗者とにはわけない。 学ぼうとする人としない人にわける。」 ベンジャミン・ハーバー(社会学者) (p.42)

「練習をしないプロのスポーツ選手に未来がないなのと同様に、ビジネスのための勉強をしないビジネスパーソンには未来がありません」 (p.43、これは酒井さんの言葉) 

「面白いことがひとつ増えれば、そして、やり遂げたことがひとつ増えればなおのこと、そのたびにあなたの生きる力が増す」 ウィリアム・ライアン・フェルプス(アメリカの教育者) (p.70)

「笑うのは幸福だからではない。むしろ笑うから幸福なのだ」 アラン『幸福論』 (p.77)

「学びの情熱のパンデミック(大流行)を起こすことができれば、人を育てる社風は、比較的短期間でも醸成できると考えています」 (p.103、これも酒井さん)

【人材育成のためのコンセプト集】
これも、よく集めたなというくらい、学者やコンサルが開発したコンセプト、そして独自のコンセプトがが豊富に盛り込まれている。

<伸びる人材の共通点>
伝説の打撃コーチ、高畠導宏の「伸びる人材の共通点」。自分は七項目のうち、どこまで満たしているか?
・ 素直であること
・ 好奇心旺盛であること
・ 忍耐力があり、あきらめないこと
・ 準備を怠らないこと
・ 几帳面であること
・ 気配りができること
・ 夢を持ち、目標を高く設定することができること(以上、p.49)

<修羅場の経験>
名マネージャーの要件としての「修羅場の経験」について、5つのカテゴリに分類した上で、それぞれについて具体例を交えて語っている。
① 業務上の大失敗
② 昇進の遅れや降格
③ 部下の問題
④ 植生の変更や転職
⑤ 個人的なトラウマ

こういう一見すると曖昧な概念を構造化する力は面白い。

<勝ち癖をつける>
「バックワード・チェイニング」というコンセプトは非常に興味深い。「『つねにゴールのテープを切る』という成功体験を積ませつつ、徐々に難易度を高めていく経験のデザイン手法」とのこと。詳しくは本書p.130-131

【コンサル的な緻密な論の組み立て】
章の構成を見るだけで、酒井さんの頭がいかにMECEでロジカルに構成されているかが分かる:

第一章 何のために育てるのか(人材育成の目的)
第二章 誰を育てるのか(育成ターゲットの選定)
第三章 いつ育てるのか(タイミングを外さない育成)
第四章 どうやって育てるのか(育成プログラムの設計思想)
第五章 誰が育てるのか(人材育成の責任)
第六章 教育効果をどのように測定するか
第七章 育成プログラムの具体例

読み進めながらも、「いま何の話をしているんだっけ?」というのが頭にすっきり入ってくるのが嬉しい。プレゼン資料を作る際にも、こういった構成は勉強になるはず。

ということで、まだまだ紹介したい箇所は多いのですが、人事担当に限らず、「いかに己の能力を高めるか」という観点からも参考になる一冊だと思います!