医療戦略セミナー2009年12月10日

HBSに2年間いながら、マイケル・ポーター教授が話しているのをはじめて見たのが昨日、東大キャンパスで開催されたセミナーだったとは、なんとも皮肉。
http://www.k-jpr.com/Japanese/Activities/News/2009/091209.pdf

シャープで落ち着いたイメージを勝手に持っていたので、かなり情熱的で、身振り手振り交えて話し、必ずしも言葉数が少なくないところが意外だった。

近著「医療戦略の本質」(http://www.amazon.co.jp/dp/4822261204)は、疲弊する米国医療システムについて、戦略論的なフレームワークを用いて鋭い分析をなし、処方箋まで提案する力作。

この中では、重要なプレイヤーとしての保険者(=保険会社)にも一章が割かれている。これに対してわが国では、保険者=各種健保組合。保険会社は医療システムの議論のカヤの外に置かれている。同書を読みながら、我々保険会社が医療システムの中でどのような役割を果たすべきか、考えさせられた。

セミナーでは、本書で指摘している「医療コストを削減するためには、医療行為の質を高めることが必須である(早く患者が健康になることが最善のコスト削減策)」ということで、患者の健康から見た医療の質を高めることにフォーカスする必要性を説明し、中でも「事後検証できるように、効果を測定すること」の重要性を説明していた。

そのあとになされた東大の永井教授のお話では、「医療費を増やしても、医師の数を増やしても、本質的な問題が解決するわけではない」という指摘が非常に納得できるものだった。構造的な課題を解決するよう、全体のシステムデザインを最適化しない限り、根本的な解決にはならないわけですね。

新しい医療保険のあるべき姿についても、実に示唆に富む二時間の講演会だった。